医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

COVID-19診断の安全な実施のための教育ツールとしてのバーチャルリアリティシミュレーションの効果と実用性。前向き無作為化パイロット試験

Effectiveness and Utility of Virtual Reality Simulation as an Educational Tool for Safe Performance of COVID-19 Diagnostics: Prospective, Randomized Pilot Trial
Authors of this article: Tanja Birrenbach 1, 2  Author Orcid Image ;   Josua Zbinden 1  Author Orcid Image ;   George Papagiannakis 3, 4, 5  Author Orcid Image ;   Aristomenis K Exadaktylos 1  Author Orcid Image ;   Martin Müller 1  Author Orcid Image ;   Wolf E Hautz 1  Author Orcid Image ;   Thomas Christian Sauter 1  Author Orcid Image

 

games.jmir.org

 

背景

COVID-19などの病気の蔓延を防ぐためには、衛生と個人防護具(PPE)を適切に使用することが最も重要であるが、医療従事者はPPEの着脱や手指の衛生について誤った技術を使用していることが明らかになっており、医療従事者の間で多くの感染症が発生している。社会的な距離を置くという制限があること、PPEや検査材料が不足していること、最適なトレーニングに関するエビデンスがないことなどから、教育やトレーニングは困難です。バーチャルリアリティVR)シミュレーションは、これらの障害を解決するために、多感覚、3次元、完全没入型、安全なトレーニングの機会を提供することができます。

 

目的

本研究の目的は、COVID-19に関連するスキルセットおよびトレーニングの成果に影響を与えるメディア特有の変数に関して、完全没入型のVRシミュレーションと従来の学習方法の短期および長期的な有効性を探ることである。

 

方法

本研究は、医学生を対象とした前向き無作為化対照パイロット研究であり(N=29、介入VRレーニングn=15、ビデオベースの指導n=14)、トレーニング前後および1カ月後の手指消毒、鼻咽頭スワブ採取、PPEの着脱のパフォーマンスを比較するとともに、メディア使用の変数を比較した。

・手指消毒

登録時(プレテスト)、介入直後(ポストテスト1)、介入1ヵ月後(ポストテスト2)に、蛍光マーカー(Visirub concおよびSterillium、Hartmann AG)を用いて手指消毒のパフォーマンスを評価し、Derma Litecheck UV Multimedia device(KBD Ltd)を用いてUV光スキャンを行った。

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・鼻咽頭綿棒の採取と離脱時の汚染の評価

COVID-19検査のための鼻咽頭スワブを、適切な手指衛生とPPEを用いてマネキン(Little Anne, Laerdal Medical社)に実施するためのシミュレーションセットアップを設置した。

咽頭スワブサンプルを採取する正しい手順と、脱衣時に起こりうる汚染について、介入の直後(ポストテスト1)と介入の1カ月後(ポストテスト2)に評価した。

VRシミュレーション

介入群は,ORamaVR SAが開発したソフトウェアプラットフォームであるVRシミュレーション(Covid-19 VR Strikes Back(CVRSB)モジュール,バージョン1.1.6)と,ヘッドマウントデバイスOculus Rift Sおよびハンドコントローラ(Facebook Inc)を用いて,COVID-19関連スキルのトレーニングを行った。独自に開発したORamaVRソフトウェアの医療用VRレーニングアプリケーションは,すべてのVRデスクトップおよびモバイルHMDで無料で利用できる。

http://elearn.oramavr.com/cvrsb/

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参加者は,シングルプレイヤーモードを使用して,シミュレーションを2回実行した.

結果

両群とも、トレーニング後の成績が有意に向上し、その効果は1ヵ月後も持続した。トレーニング後、VR群は鼻咽頭スワブ採取の成績が有意に向上し、中央値で17点中14点(IQR13-15)を獲得したのに対し、対照群は17点中12点(IQR11-14)であった、P=.03。また,VRシミュレーションの没入感と忍容性が良好であったことから,VR群の満足度は対照群に比べて有意に高かった(ユーザー満足度評価アンケートの中央値27/30(IQR 23-28)に対し,対照群は22/30(IQR 20-24),P=.01)。

 

結論

VRシミュレーションは、医学生のトレーニングにおいて、従来の学習方法と同等以上の効果があり、ユーザーの満足度に関してもメリットがあった。これらの結果は、VRが単純および複雑な臨床スキルを習得するための有用なツールであるという一連の証拠を追加するものである。