医学教育つれづれ

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眼科研修医の臨床推論能力を向上させるための仮想患者と標準患者の比較。無作為化比較試験

Virtual patients versus standardized patients for improving clinical reasoning skills in ophthalmology residents. A randomized controlled trial
Tayyaba Gul Malik, Usman Mahboob, Rehan Ahmed Khan & Rabail Alam 
BMC Medical Education volume 24, Article number: 429 (2024)

bmcmededuc.biomedcentral.com

背景
病歴聴取と臨床推論は、知識、認知、メタ認知を必要とする重要なスキルである。研修生がこれらのスキルを練習するためには、さまざまな患者との出会いを何度も経験することが重要である。しかし、患者の安全も重要であり、研修生は重症患者を扱うことはできない。この問題に対処するため、眼科卒後研修医の臨床推論スキル習得におけるVirtual Patients(VP)の使用とStandardized Patients(SP)の使用の有効性を検討するランダム化比較試験が実施された。

方法
パキスタンのラホールにある2つの病院の卒後研修医をVP群とSP群のいずれかに無作為に割り付け、プレテスト後30分間、VPまたはSPによる臨床推論演習を行った。その後、ポストテストが行われた。この活動から1ヵ月後、追跡ポストテストが実施された。データはIBM-SPSSバージョン25を用いて収集・分析された。反復測定ANOVAは、経時的な学習スキルの効果を追跡するために使用された。

結果
研修医の平均年齢は28.5±3歳であった。男女比は1:1.1であった。SP群の平均得点は12.6±3.08点、16.39±3.01点、15.39±2.95点、VP群の平均得点は12.7±3.84点、16.30±3.19点、15.65±3.18点であった(p値<0.00)。しかし、VP群とSP群の差は統計的に有意ではなかった(p=0.896)。さらに、臨床推論能力の保持に関しては、VP群とSP群の間に統計学的有意差は認められなかった。学習効果については、VP群と比較して、SP群は臨床推論演習直後の得点が51.46%であったのに対し、VP群は49.1%であった。1ヵ月後では、SP群38.01%、VP群40.12%であった。

考察
研究の結果から、VPとSPは臨床推論スキルの向上において同等の効果があると結論づけられています。
VPは繰り返し使用が可能で、安全な学習環境を提供するため、特にリソースが限られた環境や危険を伴う直接的な患者ケアが困難な状況で有用です。
VPの有効性について他の専門分野や以前の研究との比較も行っており、VPの使用が伝統的な教育手法と比較して知識の保持に有利であるとされる事例も紹介しています。
VPのさらなる研究と開発が推奨されており、特にオンデマンドでアクセス可能で、個々のペースに合わせて学習できることから、教育ツールとしてのさらなる潜在能力があるとされています。

結論
VPは、眼科の卒後研修医が安全な環境で臨床推論のスキルを学ぶために使用することができる。これらの装置は、実際の患者に危険を及ぼすことなく繰り返し使用することができる。同様に有用ではあるが、SPは繰り返し練習するために利用できないという制限がある。