A corporeal conundrum: Challenges posed by remote consultation for postgraduate medical education
John R. Campion, Peter Cantillon
First published: 09 October 2023 https://doi.org/10.1111/tct.13672
https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tct.13672?af=R
背景
COVID-19の大流行により、病院の外来診療における遠隔診察の利用が加速した。遠隔診察は、臨床環境と学習環境を変化させるが、その方法は十分に理解されていない。本研究では、このような環境が初めてである場合に、研修生がどのように研修と学習について交渉するのかを探ることを目的とした。
方法
ある大学病院の消化器内科から8名の医師を無作為抽出で集めた。4人のコンサルタントと4人の研修生が、個別の半構造化面接に参加した。インタビュー記録を解釈的現象学的に分析し、参加者が語る遠隔診療所での学習・教育経験を特徴づけるためのテーマを作成した。
結果
参加者は、遠隔診察で診察する患者一人ひとりの心的表象をどのように作成しようとしているかを説明した。コンサルタントはこの作業を比較的容易であると感じたが、研修医は遠隔診療をより困難であると感じ、患者の状態を全体的に把握するためには患者の物理的な存在が重要であると強調した。また研修中の医師は、遠隔診察によって身体診察ができない場合、患者の状態について実行可能なメンタルモデルを構築するのに苦労していた。
考察
本研究は、外来での研修生の学習を促進する上で、患者の身体的存在が重要であることを強調している。患者の身体診察は、診断推論を確認するために極めて重要である。若手研修生は、上級研修生とは異なり、遠隔医療セッション中に患者の心的表象を形成する際に課題に直面しており、遠隔医療は経験の浅い研修生にとってより困難である可能性が示唆された。
これまでの研究では、診断過程における身体診察の重要性も強調されてきた。本研究では、若手研修医が遠隔医療相談中に先輩に質問することをためらい、自分の評判が下がることを恐れていることがわかった。このことは、先輩の前で自分のイメージを保つために助けを求めることを避けるかもしれないという過去の研究と一致している。
遠隔診察の利用が増加していることから、従来の外来学習モデル、特に若手研修生向けの学習モデルを調整する必要がある。遠隔診察は、最適な利用のために改良されつつあるが、対面診察の補完的アプローチとしてとらえるのが最善である。本研究の背景には、高速インターネットへのアクセスが様々であったため、主に電話によるコンサルテーションが行われており、低帯域幅のビデオ通話を含む様々な形態の遠隔コンサルテーションに適応する必要性が強調されている。
この研究の限界には、ビデオ会議の利点を欠いた電話相談に焦点を当てたことと、質的研究特有のサンプル数の少なさがある。遠隔診察が卒後臨床教育に与える影響を理解するためには、さらなる研究が必要である。
結論
遠隔診察の増加、特にCOVID-19以降は、卒後臨床教育の質と性質に影響を及ぼす可能性がある。特に若手研修医は、遠隔診察の場で患者の状態について包括的なメンタルモデルを形成することに困難を感じるかもしれない。このような環境は、外来患者のシナリオにおける教師と学習者の間の力学にも影響を与える可能性がある。遠隔診療を採用している医療システムは、臨床と教育の両面で適切なトレーニングを行うべきである。本研究は、遠隔コンサルテーション・クリニックの業務プロセスや運営を修正することで、その教育的価値を高めることができる可能性を示唆している。
・遠隔診療所における卒後学習を促進するための適応策
1. 若手研修医が上級医の遠隔診察のアプローチを観察し、質問する機会を設ける。
2. 臨床後のチームデブリーフィングで、研修生の経験や困難な症例について話し合う機会を設ける。
3. 臨床的にそれほど複雑でない患者を後輩研修生にトリアージする。
4. 若手研修生の遠隔診察の手引きとなる診察補助書式を提供する。