The effect of watching lecture videos at 2× speed on memory retention performance of medical students: An experimental study
Yavuz Selim KıyakORCID Icon, Işıl İrem Budakoğlu, Ken MastersORCID Icon & Özlem Coşkun
Published online: 17 Mar 2023
Download citation https://doi.org/10.1080/0142159X.2023.2189537
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ポイント
多くの医学生は、時間短縮のために講義ビデオを2×(倍)速で視聴しています。これは時間の節約にはなるが、彼らの学習への悪影響は不明である。
本論文では、医学生が2倍速で講義ビデオを視聴した場合の学習効果を測定する無作為化試験について説明し、彼らの学習に大きな悪影響はないことを明らかにする。
研究背景
講義ビデオは医学教育において非常に一般的なツールとなっています。特にCOVID-19パンデミックの影響で、多くの医学部が緊急リモート教育(Emergency Remote Teaching)への急速な移行を余儀なくされ、録画された講義ビデオが広く使用されるようになりました。
医学生にとって、これらのビデオには主に2つの利点があります:
- 便利な時間と場所で講義を視聴できる柔軟性
- 倍速再生の機能(時間節約のため)
実際、一部の医学生はライブ講義よりも録画された講義を好む理由として、倍速で視聴できることを挙げています。医学生は特に基礎科学の講義ビデオを試験前に復習のために視聴する傾向があり、時間を節約するために高速再生を利用することが一般的です。
研究方法の詳細
実験デザインと参加者
- 実験デザイン:事後テストのみの実験デザイン
- 参加者:トルコの医学部1・2年生60名
- 参加者募集方法:9つの医学部の1・2年生に対してメッセージアプリを通じて告知
- 合計126名の応募があり、最終的に60名が参加
グループ分け
- 性別と学年のバランスを確保するための層別無作為化を用いて2つのグループに分けられました
- グループ1:1倍速でビデオを視聴
- グループ2:2倍速でビデオを視聴
実験手順
- 実験は2022年7月に実施(学年終了直後)
- 参加者は自宅でYouTubeを通じてビデオを視聴
- フルスクリーンモードでの視聴が必須で、メモを取ることやビデオの一時停止は許可されていなかった
- Google Meetを通じてウェブカメラでプロクター(監視)された
- テストはビデオ視聴直後と1週間後に実施
- テスト中はプロクターされなかったが、誠実さについての同意声明をクリックする必要があった
使用されたビデオ
- 内容:腫瘍学の基本用語の紹介
- 選定理由:1・2年生がまだ学習していないトピック
- 講師:トルコ語のネイティブスピーカーの専門家
- 形式:テキストと画像/イラストを含むスライドのみ(講師は映っていない)
- 長さ:1倍速で10分35秒(1290単語)、2倍速で5分17秒
- 話速:1分あたり約122単語(1倍速)
評価方法
- 20問の単一最良解答型多肢選択式問題
- すべての問題はビデオで述べられた事実を問うもの
- 医師である3人の著者によって作成・レビュー・確定
- Google Formsを通じてアクセスと回答
詳細な結果分析
全体スコア
- 即時テスト:
- 1倍速グループ:11.26±4.06
- 2倍速グループ:10.16±2.46
- 統計的有意差なし:t(58)=1.26, p>.05
- 効果量(Cohen's d):0.32(小さい効果)
- 遅延テスト(1週間後):
- 1倍速グループ:9.66±3.94
- 2倍速グループ:8.36±2.80
- 統計的有意差なし:t(55)=1.42, p>.05
- 効果量(Cohen's d):0.38(小さい効果)
- 両グループとも即時テストのスコアは遅延テストより有意に高かった(p<.05)
- 男女ともに、即時テストのスコアは遅延テストより有意に高かった(p<.05)
問題別分析
- 即時テストでは、個々の問題に関して1倍速と2倍速グループのスコア間に有意差はなかった(p>.05)
- 遅延テストでは、問題#4と問題#5において1倍速と2倍速グループのスコア間に有意差があった(p<.05)
- 問題#4:「腫瘍における分化の完全な喪失を表す用語は何か?」
- 問題#5:「どのタイプの腫瘍が他よりも予後が悪いか?」
- 女性参加者の中では、問題#4、#8、#13、#18において即時テストのスコアが遅延テストより有意に高かった(p<.05)
- 男性参加者の中では、問題#11において即時テストのスコアが遅延テストより有意に高かった(p<.05)
- 20問の弁別指数の平均:即時テストで0.42、遅延テストで0.43
理論的考察
この研究結果を説明する理論として「加速再生仮説」(Accelerated Playback Hypothesis)が挙げられています。この仮説は以下の事実に基づいています:
- 人は1分間に約300語を読むことができる
- 話すスピードは1分間に約150語である
この差を「未使用の処理能力」と考え、「マルチメディアを使用した教育メッセージの加速再生は、閾値レベルに達するまで有意に劣化しない」と理論化されています。この閾値は文脈によって変わる可能性がありますが、先行研究では劣化は2倍速以降に始まり、理解力が実質的に損なわれるのは2.5倍速であることが示されています。
研究の意義と実践的応用
2倍速でのビデオ視聴が理解力を損なわないという発見は、医学生にとって重要な意味を持ちます:
研究の限界
- 単一施設での研究で参加者数が少ないため、結果の一般化に制限がある
- テスト問題は事実的情報の評価を目的として設計されており、より高次の思考スキルへの影響は不明
- 一部の問題(#4と#5)や性別による違いについて、合理的な説明が難しい
- 事前テストがなく、追加のデータポイントとして役立つ可能性があった
今後の研究課題
この研究は医学教育における講義ビデオ速度の効果に関するさらなる研究の必要性を強調しています:
- より多くの参加者と複数施設での研究
- 異なる複雑さの内容を持つビデオを使用した研究
- より高次の思考スキルへの影響を評価する研究
- 倍速視聴の異なる閾値(例:1.5倍、2.5倍など)を検証する研究
- 長期的な記憶保持への影響を調査する研究
この研究は、医学生が時間を効率的に使いながら学習効果を維持できる可能性を示唆しており、過密なカリキュラムに対処するための実践的な方法を提供しています。