医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

研修初日のコアEPAのパフォーマンスに関する実証調査

What can we expect from medical graduates? Empirical survey on the performance of Core EPAs in the first days of residency

Ylva Holzhausen, Asja Maaz, Yadira Roa-Romero & Harm Peters
BMC Medical Education volume 20, Article number: 452 (2020)

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

コアになるEntrustable Professional Activities(EPA)は、研修開始する際に期待されるパフォーマンスを規定するために定義されたものである。これらのEPAの内容は、主に専門家の同意を得て作成され、検証されている。本研究では、一連の制度的EPAの内容の妥当性を高めるための補完的な方法論的アプローチとして、研修医の開始時の実際の業務遂行能力と監督レベルの実証的な情報を収集することを目的としている。

 

研究方法

2017年と2018年の夏に、シャリテ医学卒業生(n=720)を対象に、卒業後のアンケートを郵送で実施した。アンケートでは、コアEPA、コアになる手技、およびより高度なEPAの実施状況を対象とした。卒業生には、研修開始後、それぞれの EPA をどの程度の頻度で実施したか、またどの程度の監督下で実施したかを尋ねた。卒業生の大多数(75%以上)は、少なくとも間接的な監督下でコアEPAおよび手技を実施したことがあると予想された。

コアEPA

・病歴・身体検査・まとめ 
・診断計画 

・検査結果の解釈 

・治療計画 

インフォームド・コンセントの取得

・患者さんへの情報提供と助言 

・患者病歴の提示

・患者の引き継ぎ

・患者レポートの作成

・緊急事態を認識し、対応する

エビデンスに基づいた症例発表 


コアとなる手技

・静脈血採取

・毛細血管採血 

・末梢カテーテル

・血液培養 血液培養を受ける

・塗抹を取る 塗抹を取る(経口、鼻腔、創傷、肛門、泌尿器) 塗抹を取る

・皮内注射 皮内注射を行う

・皮下注射 皮下注射を行う

・筋肉内注射 筋肉内注射を行う

・輸液 輸液を与える

・経鼻胃管の留置

・心電図を撮る

・包帯 包帯をつける、または交換すること。

・処方箋 処方箋の書き方

高度なEPA

・患者の入院を管理する

・病棟回診 

・患者の退院を管理する

・週末病棟回診 

・当直・深夜勤務 

 

結果

合計 215 名の卒業生(30%)がアンケートに回答し、131 名(18%)のアンケートをデータ分析に含めることができた。参加者の大半は女性(63%)で、複数の専門科をもつ病院(50%)または大学病院(30%)に勤務していた。コアEPAの11の内容のうち10個の内容を75%以上の卒業生がレジデンシー開始時から実施しており、9つの内容を間接的な監督下で実施していた。コアになる手技については、大多数の卒業生が間接的な監督下で実施した手技は13件中3件にとどまり、10件の手技は参加者の3分の1以上が実施していなかった。また、5つの高度EPAのうち、研修開始以来75%以上の参加者が実施していないものが1つ以上あり、4つは、間接的な監督下で50%の参加者が実施していた。

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結論
本研究の結果は、定義されたコアEPA の妥当性を大きく補完的に確認するものである。コアの手技の実際の実施率が低いことは、現場の現実とよりよく一致するように調整することの議論を刺激するのに役立つ。