医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

臨床推論のブループリントの実装:知識変換リソース

Implementation of a clinical reasoning blueprint: Knowledge translation resources
Heather Knight, Julie Peterson, Michelle Reilly, Jennifer Furze, Gail Jensen
First published: 18 March 2024 https://doi.org/10.1111/tct.13763

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tct.13763?af=R

クリニカル・リーズニング(CR)は医療教育において重要な要素であり、教育者が学生の臨床推論能力を向上させるためには効果的な教育戦略が必要です。本研究チームは、CRの教育、学習、評価戦略に関するエビデンスを統合するためにCRブループリントを開発しました。このブループリントは、具体的な学習理論と結びつけられ、教育者がなぜ特定の戦略を用いるべきかを理解するためのガイドとなっています。

教育者はこのブループリントを使用して、学生の臨床推論能力を評価し、適切な教育戦略を選択します。また、プロジェクトチームは教育者がブループリントを利用する際に直面する障壁を特定し、それに基づいて知識翻訳(KT)リソースを開発しました。これには、CRブループリントの構造の説明、使用方法、教育環境間での共通言語の促進、教育者の開発のための教授戦略の例、臨床ケーステンプレートが含まれます。これらのリソースは、臨床教育者が教育と学習の役割を強化し、次世代の医療提供者の臨床推論能力を育成するための実践的なツールとして提供されます。


・CRブループリント(クリニカル・リーズニング・ブループリント)

構成要素

証拠に基づく教育戦略: CRブループリントは、証拠に基づいた教育戦略を組織化し、これを特定の学習理論に接続します。これにより、教育者はなぜ特定の戦略が有用なのかを理解し、教育プラクティスに組み込むことができます。

学習者評価: ブループリントは、学習者の臨床推論能力を評価するための具体的な方法を提供します。これには、学習者の知識、技能、そして概念的な理解を測定するための様々な評価ツールが含まれます。

パフォーマンスレベル: 学習者のパフォーマンスを初心者から熟練者までの異なるレベルに分け、各レベルに応じた教育戦略を提供します。これにより、教育者は学習者の進捗に合わせて指導方法を調整できます。

使用方法

対話型ツールの利用: CRブループリントはしばしば対話型のデジタルツールとして提供され、教育者は簡単に関連するセクションにアクセスできるようになっています。教育者は目次をクリックするだけで、必要な情報やリソースに直接ジャンプすることができます。

教育診断の実施: 教育者はブループリントを使用して、学習者の臨床推論能力を評価し、問題のある領域を診断します。その後、最も適切な教育戦略を選択して適用することができます。

教育プロセスの改善: 教育者は、ブループリントに記載されている証拠に基づいた戦略を用いて、教育プロセスを体系的に改善し、学習者の臨床推論能力を効果的に向上させることができます。

 

教育者育成をサポートするための指導戦略

  1. 共通言語の促進: 教育者が教育と学習の用語についての理解を深め、同僚との効果的なコミュニケーションを支援するために、一般的な教育用語のリファレンスシートが開発されました。このシートは、教育者が学習理論、評価方法、教育戦略に関連する用語をすぐに参照し、理解するのに役立ちます。これにより、教育者間での共通の理解が促進され、より一貫した教育アプローチが可能になります。

  2. 教育診断の開発: CRブループリントを利用して、教育者は学習者の臨床推論能力を評価し、問題のある知識領域を特定します。この教育診断は、教育者が学習者のニーズに合わせて教育戦略をシステマティックに調整するのに役立ちます。教育者は、学習者の強みと弱点を評価した上で、最も適切な教育戦略を選択することができます。

  3. パフォーマンスレベルの評価と戦略の調整: 学習者のパフォーマンスレベルに基づいて教育戦略を調整することは、教育者が個々の学習者に合わせて教育を最適化するのに重要です。CRブループリントは、初心者から熟練者までの各パフォーマンスレベルに応じた教育戦略を提供し、教育者が学習者の発展段階に合わせて教育を調整できるよう支援します。

  4. 学習理論と教育戦略の統合: 教育者は、CRブループリントに記載されている学習理論を基に教育戦略を選択することで、その選択の背後にある理論的根拠を理解することができます。このアプローチは、教育者が意図的で効果的な教育活動を行うための基盤となります。ポケットカードや他の教育リソースは、教育戦略と学習理論を直接結びつける例を提供し、教育者が理論を実践に活かすのを支援します。

  5. ケース適用を通じた実践の促進: 実際の教育シナリオにCRブループリントを適用することで、教育者は自己の教育スタイルを反省し、改善することができます。教育者は、提供されたテンプレートを使用して具体的なケースに対する臨床推論の評価や促進を行い、そのプロセスを通じて自身の教育方法を見直し、強化します。