医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学生の試験成績のダイナミクスを、学習習慣、成長マインドセット、自信レベル、人口統計との関連から探る

Exploring the Dynamics of Medical Students’ Exam Performance in Relation to Study Habits, Growth Mindset, Confidence Levels, and Demographics. Med.Sci.Educ. (2024).

Patenaude, B., Hogan, R.E. & Manguvo, A. 

https://doi.org/10.1007/s40670-024-01976-3

link.springer.com

 

医学教育における学生へのユニークな要求のため、本研究では、1学期完結の医学神経科学コースにおける学部医学生の試験成績と教育的および人口統計学的要因との関係を調べた。本研究では、医学生の混成コホートを対象に、自己申告による調査データと試験成績を用い、特に成長マインドセット、学習方略の使用、自信、出席率、人口統計学的特性との関係を検討した。カイ二乗、ANOVA、相関検定により、研究変数間の興味深く複雑な関係が明らかになった。本論文は、学業成績を向上させる可能性のある研究からの示唆を論じるとともに、今後の研究や学業介入に潜在的な分野を特定することで結ばれる。

 


背景

本研究は、学生に弾力的な考え方と持続可能な学習スキルを身につけさせる医学教育の厳しい要求に焦点を当てている。本研究では、医学教育プログラムが意図せずして、あまり効果的でない学習習慣や成績重視の学習心理を助長する可能性があることを認識する。本研究は、医学生の燃え尽きや学業不振といった好ましくない結果に対する解決策を模索しながら、学業成就に関連する学生の認識と学習行動を探ることを目的としている。

方法

本研究は、ミズーリ大学カンザスシティ校医学部で実施され、医学生の混成コホートを対象とした。人口統計、学習習慣、成長マインドセット、出席率、自信に関するデータを収集するために、自己報告式の調査が用いられた。データ分析には、カイ二乗、ANOVA、相関検定が用いられた。

結果

人種による試験スコアの有意差が認められ、少数民族や不特定多数の学生は白人やアジア系の学生よりスコアが低かった。性別による有意差は認められなかった。学習習慣、特に教材に積極的に取り組む習慣は、試験の高得点と相関していた。意外なことに、授業への出席は試験の得点と統計的に有意な相関を示さなかった。成長マインドセットと自信は試験の得点と統計的な相関関係はなかったが、薬をやめようと思うことは、ほとんどすべての試験で成績向上と正の相関関係があった。

考察

本研究は、医学生の学業成績に影響を与える要因が複雑であることを浮き彫りにした。様々な人口統計学的特性と、それらが学習習慣、成長マインドセット、自信などの教育的要因に与える影響を理解することの重要性を指摘している。この研究結果は、これらの要因と学業成績の関係に関する既存の概念を覆すものである。

限界

事務的なミスにより、5回の試験のうち2回で学習習慣の項目が漏れていた。また、本研究は1学年に1校の医学部で行われたため、研究結果の一般化には限界があるかもしれない。社会的望ましさバイアスの影響を受ける可能性があるため、自己報告データに依存していることも限界である。さらに、この研究では、観察された関係に影響を及ぼす可能性のある、さまざまな交絡因子の探索やコントロールを行っていない。

応用の可能性

本研究で得られた知見は、医学教育における指導法や支援メカニズム、特にさまざまな学生層が必要としている特定の分野への対応に役立つ。教育要因と試験成績との間の微妙な関係を理解することは、より的を絞った効果的な学業介入につながる可能性がある。本研究はまた、成長マインドセット介入の影響や、様々な層における自信の役割の探求など、今後の研究分野も示唆している。

結論

本研究は、様々な教育的要因や人口統計学的要因に関連した医学生の試験成績の複雑なダイナミクスに関する洞察を提供する。また、医学教育における学習戦略、マインドセット、自信レベルの最適化に関する継続的な議論に貢献し、多様な学生の背景を考慮したオーダーメイドのアプローチの必要性を強調している。