The relationship of psychological health and primary emotional traits in medical students
Valentina Colonnello, Gloria Leonardi, Marina Farinelli & Paolo M. Russo
Published online: 09 Dec 2022
Download citation https://doi.org/10.1080/0142159X.2022.2152662
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・ポイント
医学生の主要な感情特性は、うつ病と心理的幸福の明確な側面に関連している。
SEEKINGと逆にFEARは、いくつかの幸福の次元とうつ病に関連している。
医学教育カリキュラムは、医学部研修で課題となる特定の幸福の次元を考慮する必要がある。
医学教育カリキュラムは、基本的な感情特性と幸福の関係を考慮する必要がある。
はじめに
医学生のウェルビーイングに注目した研究がいくつかある。本研究では、一次情動システムを幸福の中心であり、人格の基礎であるとみなす神経進化的情動神経科学の視点に基づき、医学生の心理的幸福のうちどのような点が課題となっているか、また情動特性、心理的幸福およびうつ病との関係について調査した。
調査方法
単施設横断研究において、医学生の一次感情特性(SEEKING、FEAR、ANGER、SADNESS、CARE、PLAY、Spirituality)、心理的幸福の次元(自律、環境支配、ポジティブな関係、自己受容、生きがいを持つ、自己成長)、うつ症状を、感情神経科学性格尺度、規範データとなる心理的幸福尺度、Beck Depression Inventoryを用いて測定した。
結果
標準データと比較して、医学生は心理的自律性、肯定的関係、自己受容が低いが、生きがいを高く感じていた。医学生の感情特性は、特定の心理的幸福感やうつ病に関連していた。また、「SEEKING」と逆に「FEAR」は、あらゆる次元の幸福感および抑うつ症状と関連していた。
結論
医学教育カリキュラムは、幸福の様々な側面と、それらの基本的な感情特性との関係を考慮する必要がある。本研究で得られた知見は、幸福を支援する医療学習カリキュラムを計画するための教育的意義を持っている。第一に、医学教育カリキュラムは、基本的適応感情システムと幸福の関係、および環境影響に対する感情特性の可塑性について、学生および教育者の意識を高めることによって、学生の幸福の促進に貢献する可能性がある。
さらに、特定の幸福感に関連する感情傾向の活性化を持続させるような学習環境を設定・再調整することで、医学生の幸福感を追求できる可能性があることが示唆された。例えば、内発的動機づけや目標指向的活動に関与するとされる原始的欲求(SEEKING urges)の充足を維持するような学習環境を設定することが考えられる。
さらに、自律性、良好な人間関係、自己受容が学生の幸福感を低下させる主な領域であることから、教育者や家庭教師は、これらの特定の次元に寄与する感情傾向を維持・活用するプログラムを導入することが可能である。例えば、他の次元との肯定的関係がCAREやPLAYと正の相関があることから、肯定的関係の認識が低い学生は、例えば、CAREやPLAYの特性を引き出し、支援するようなピアチュータープログラムに参加することが推奨されるかもしれない。
本研究で得られた知見は、幸福感における主要な感情特性の役割を検討するための舞台を提供するものである。また、一次的情動の傾向や欲求が満たされることによって、医療研修中の心理的健康がどの程度、どのようなメカニズムで増加するのかについては、さらなる研究が必要である。