医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

サウジアラビアの3次病院における医学生の学習環境認識の評価

Assessing the Learning Environment Perception Among Medical Students at a Tertiary Referral Hospital in Saudi Arabia.

Al Mairi M, Youssef Y, Alhamshari A, Alkhatib R, Koujan H, Alkhabaz A, Szabo A. 

Adv Med Educ Pract. 2024;15:461-471
https://doi.org/10.2147/AMEP.S454478

目的

サウジアラビアのリヤドにある紹介制の3次病院における学習環境について、アルファイサル大学医学部(AUCOM)の医学生の認識を評価すること。
方法

検証済みのDundee Ready Educational Environment Measure(DREEM)質問票を2020-2021年度の4年生と5年生全員に実施した。スコアは質問票開発者が提供した記述子を用いて分析し、SPSSを用いて異なる学生のコホート間で比較した。
結果

DREEMの総合得点は120.45/200点で、「ネガティブな環境よりもポジティブな環境」と表現でき、改善の可能性があるポジティブな認識を示している。また、「学生の社会的自己認識」に問題があることが示された以外は、すべての領域で肯定的なスコアが示された。また、「生徒の学習に対する認識」の項目では、男子学生よりも女子学生の方が統計的に有意に肯定的なスコアを示した。個々の設問のスコアは、カリキュラムの問題点を指摘する8つの設問を除き、一貫してプラスであった。学生コーホート間で比較すると、5つの質問で両学年の学生間で統計的に有意なスコアの差が見られたが、そのうちの2つだけが問題点を示すスコアであった。

1. 学生の学習環境に対する全体的な認識

全体のDREEMスコアは120.45/200であり、「よりポジティブな環境」と評価されています。これは、学生がリファラルベースの三次医療病院での学習環境を概ね良好と感じていることを示しています。ただし、いくつかの領域での改善が必要です。

2. ドメイン別の評価と課題

  • 学生の学習に対する認識 (SPL):

    • 総合スコアは27.91で、「よりポジティブな認識」とされています。
    • 女性学生は男性学生よりも有意に高いスコアを示しており、性別による学習環境の認識の違いが見られました。
    • 「教育が事実学習を強調しすぎている」という項目は低評価であり、これはカリキュラムの内容が原因である可能性があります。今後、この点を改善するための取り組みが必要です。
  • 教師に対する認識 (SPT):

    • 総合スコアは28.14で、「進展中」と評価されています。
    • 「教師が知識豊富である」という項目は高評価を受けていますが、「科学研究の方法について多くを学んだ」という項目は低評価でした。これは、学生が科学研究に関する実践的な経験を十分に得られていないことを示唆しています。
  • 学術的な自己認識 (SAP):

    • 総合スコアは19.61で、「よりポジティブな感覚」とされています。
    • 「今年の試験に合格する自信がある」という項目は高評価であり、学生が自分の学業成績に自信を持っていることを示しています。
  • 雰囲気の認識 (SPA):

    • 総合スコアは29.94で、「よりポジティブな態度」と評価されています。
    • 「講義中の雰囲気がリラックスしている」という項目で、4年生と5年生の間に有意差が見られました。これは、講義中の雰囲気が年度によって異なることを示しており、教育方法の改善が必要です。
  • 社会的自己認識 (SSP):

    • 総合スコアは14.97で、「良くない場所」と評価されています。
    • 「ストレスを感じる学生のためのサポートシステムが良い」という項目は非常に低評価でした。これは、クリニカルローテーション中の学生に対するサポートが不十分であることを示しています。

3. 性別による違い

女性学生は「学習の認識」ドメイン男性学生よりも有意に高いスコアを示しました。これは、女性学生が学習環境に対してよりポジティブな認識を持っている可能性を示しています。この違いを理解し、両性にとってより良い学習環境を提供するための取り組みが必要です。

4. 改善のための具体的な提案

  • 社会的サポートの強化: 特にクリニカルローテーション中の学生に対するサポートプログラムの強化が求められます。これには、チームビルディング活動やメンターシップ、ピアサポートの導入が含まれます。
  • 教育方法の改善: 事実学習の強調を緩和し、より実践的で自発的な学習を促進する教育方法を検討することが必要です。例えば、ケーススタディやシミュレーションを導入することで、学生の理解を深めることができます。
  • 科学研究の実践的教育: 学生が科学研究に関する実践的な経験を積む機会を増やすことが必要です。これには、研究プロジェクトやワークショップの導入が考えられます。

5. 今後の研究の方向性

今後の研究では、学生のフィードバックを基に具体的な問題点に対処し、学習環境の改善を目指すことが重要です。特に、社会的自己認識の領域に焦点を当て、学生の社会的サポートシステムの強化が求められます。また、学習環境が臨床スキルの発達や専門的な能力に与える影響を探る研究も必要です。


結論

紹介制の3次病院は、学部医学教育における学習環境として学生に肯定的に受け止められる可能性がある。われわれは、今後の研究の対象とすべき、われわれのカリキュラムにおいて懸念されるいくつかの領域を特定した。