医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学系大学教員の組織的定着に効果的な要因に関する視点の探求:質的研究

Exploring the viewpoint of faculty members of medical sciences universities about effective factors on their organizational retention: a qualitative study
Elaheh Mohammadi & Mahla Salajegheh 
BMC Medical Education volume 23, Article number: 725 (2023)

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景と目的
医学系大学における教員の確保は、教育システムの存続にとって最も重要な価値の一つである。本研究では、イランの医学系大学の教員を対象に、教員の組織的定着に影響を与える効果的な要因について調査することを目的とした。

方法
最大変量サンプリングによるディープ・インタビューを用いた質的研究。2021年から22年にかけて、イランの2つの医学系大学(テヘラン医科大学およびケルマン医科大学)を対象に、15名の教員を無作為に抽出した。

結果
質的データ分析の結果、3つの主要カテゴリーと10のサブカテゴリーが得られた。教員の組織的定着に影響を与える主なカテゴリーとして、個人的要因、組織的要因、社会政治的要因の3つが特定された。

教員の定着に影響を与える要因

1. 個人の要因

教員のニーズ: 知的、個人的、経済的な要求、そして組織内での尊敬と尊厳は、教員の定着にとって極めて重要である。経済的妥当性と敬意ある待遇が重視される。

個人の興味、動機、信念: 教員の社会的地位、教育への関心、祖国への貢献意欲、大学の名声は、教員 の定着を左右する重要な要素である。

性格特性: 頼もしさ、回復力、忍耐力、満足感などの特性は、教員が留 職するか退職するかの決定に影響を与える。

家族の問題: 家庭の状況、問題、嗜好は、教員の退職を促したり、退職を阻んだりする。

2. 制度的要因

組織構造と文化: 組織的支援、公正さ、透明性、経営手法、意思決定への教員の参画、 専門的成長の機会、雇用の安定などの要因が、教員の定着に一役買う。

教員評価システム: 教員評価の方法と結果は、教員の留職・離職の決断に影響を与える。

施設と設備: 教育、研究、福利厚生のための施設・設備の有無や質は、教員の定着に影響を与えうる。

3. 政治的・社会的要因

国の政治的安定: 政治的安定:政治的安定とは、平和な社会政治的雰囲気や一貫し た法律・政策などであり、教員養成の計画や開発目標にとって極めて重 要である。

大学における政治的安定: 大学の科学的問題を国の政治から切り離すことが不可欠である。政治的な変化により大学経営陣が頻繁に交代することは、教員のやる気を失わせる。

社会の社会政治的関心: 社会の社会的・政治的環境は、特に希望や進歩のある時期に教員の決断に影響を与えうる。

 

結論

本研究の結果によれば、医学系大学における教員のリテンションには、個人的要因、組織 的要因、社会政治的要因が有効である。教員の定着率を高める要因としては、医科系大学の教育訓練医として、教員の個人的・社会的ニーズへの配慮、組織的支援と適切な資源管理、組織の透明性と公正性、大学や国の政治的安定性などが挙げられる。医学系大学の人事プランナーは、教員の組織的忠誠心に影響を与える個人的要因、組織的要因、社会政治的要因を考慮すべきである。結論として、医学系大学における教員の組織的リテンションのためには、経済的ニーズを満たすこと、教員の名声を保つこと、大学の管理職における意思決定と実力主義に教員を関与させることが、実践的な提案として有効である。