医学教育つれづれ

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プレホスピタル医療におけるシミュレーションに基づく医療教育(SBME)ディブリーフィングとは何か?プレホスピタル医学教育におけるSBMEディブリーフィングを探る質的エスノグラフィック研究

What is simulation-based medical education (SBME) debriefing in prehospital medicine? A qualitative, ethnographic study exploring SBME debriefing in prehospital medical education
Maria Ahmad, Michael Page & Danë Goodsman 
BMC Medical Education volume 23, Article number: 625 (2023)

 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

はじめに
シミュレーションに基づく医学教育(Simulation-based medical education:SBME)のディブリーフィングは、臨床的なディブリーフィングとは異なる概念であり、シミュレーションシナリオの後に使用され、航空医療から救急医療まで幅広い分野で学習と発達の中心となっている。しかし、病院前医療におけるSBMEディブリーフィングに関する研究はほとんど存在しない。この定性的研究では、病院前SBMEディブリーフィングの促進および効果について調査し、ロンドン航空救急隊病院前ケアコース(pre-hospital care course:PHCC)をモデルとしてディブリーフィングの障害を明らかにした。

方法
2019年10月に開催されたPHCCの連続する2日間にわたり、ムラージュとデブリーフィングのエスノグラフィ的観察を実施した。詳細なフィールドノートを作成し、テーマ別に分析した。その後、プレホスピタルSBMEディブリーフィングの経験を探るため、PHCCのディブリーフィングファシリテーター4名とコース参加者3名を対象に、1対1の半構造化インタビューを7回実施した。インタビューデータは書き起こし、主題別に分析した。

結果

figure 1

SBMEディブリーフィングのファシリテーションへのアプローチ

ディブリーフィング環境: 効果的なディブリーフィングには、快適でプライベートな環境が不可欠である。ファシリテーターは、物理的環境が学習に適しており、参加者が一体感を感じられるようにする必要がある。

figure 2


構造と適応性: 構造化されたディブリーフィングセッションは有益であるが、硬直した構造はディブリーフィングを有機的でなく感じさせてしまう。ダイナミックなアプローチの方が適しているかもしれない。
認知フレームの探求: 参加者の認知フレームを理解することは非常に重要である。これらのフレームを探ることは、参加者が自分のパフォーマンスを内省し、学習ポイントを特定するのに役立つ。
共有経験からの学習: ファシリテーターが個人的な経験を共有することで、信頼を築き、参加者の関与を高めることができる。

ディブリーフィングの効果:

感情の解放: ディブリーフィングを行うことで、参加者は困難なシナリオの後に自分の感情を表現することができる。この感情の解放は、効果的な学習にとって不可欠である。
学習と改善: ディブリーフィングは、シナリオそのものよりも学習効果が高いことが多い。参加者は継続的に経験を積み重ねることで、複合的な学習につながります。
臨床実習への準備 ディブリーフィングを行うことで、参加者は実際の臨床の場面に備えることができる。

ファシリテーターの育成

ファシリテーター・トレーニング: 現在のトレーニングは、実体験に頼った非公式なものである。しかし、効果的なディブリーフィングを行うためには、正式なトレーニングが必要である。
ファシリテーターの学習: ファシリテーターもまた、ディブリーフィング・プロセスから学び、今後のシナリオやディブリーフィングを改善する。

効果的なSBMEディブリーフィングへの障害

議題の不一致: ファシリテーターと参加者の間で、ディブリーフィングの内容について意見が対立すると、プロセスの妨げになることがある。
プレッシャー: 参加者は、尊敬するファシリテーターや仲間の前でパフォーマンスすることにプレッシャーを感じ、自信や学習に影響を与えることがある。
時間:時間の制約により、ディブリーフィングの効果が制限されることがある。

研究の長所と限界

この研究の限界は、参加者グループが男性中心であることと、1つのPHCCからのサンプル数が少ないことである。しかし、混合法のアプローチとエスノグラフィーの方法論は、調査結果に信頼性を与えている。

 

結論
病院前医療におけるSBMEのディブリーフィングは複雑であり、参加者の学びを最大化するためには、参加者の課題とファシリテーターの経験を理解する必要がある。プレホスピタルSBMEディブリーフィング特有の側面として、特に予測不可能なディブリーフィング環境と、教育的障害が学習にもたらす逆説的な利点が挙げられた。また、参加者の複合的な学習、ファシリテーターの率直さ、ファシリテーターの学習など、文献ではあまり詳しく述べられていないSBMEディブリーフィングの側面も強調され、さらなる探求が必要であることが示された。