医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

上司や ピア・サポートを受ける若手医師は、質向上のために自分の意見を表明する、より仕事 に積極的な専門職である。

Junior doctors receiving supervisor and peer support are more work-engaged professionals who express their voice for quality improvement
Renée A. ScheepersORCID Icon,Aline J. Boxem &Meike M. J. Blezer
Published online: 28 Jul 2023
Download citation https://doi.org/10.1080/0142159X.2023.2240000 

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/0142159X.2023.2240000?af=R

 

ポイント

若手医師は、仕事へのエンゲージが高いほど、発言行動が多くなると報告されている。

若手医師は、より多くの上司やピアサポートを受けることで、より仕事に取り組み、燃え尽きにくくなる。

若手医師の燃え尽き症候群を軽減するために、また、若手医師が質向上のために積極的に発言するプロフェッショナルになるために、上司や ピアのサポートを培うべきである。

 

目的
日常診療において、若手医師は変革のための革新的な提案を行うことで質の向上に貢献することができる。若手医師は、上司や同僚から十分な支援を受けることで、発言行動に取り組みやすくなる。このような支援は、燃え尽き症候群の軽減や仕事への取り組みとも関連している。しかし、バーンアウトが少なく、仕事へのエンゲージメントが高い若手医師が、上司や同僚からの十分なサポートに直面して、より多くの発言行動を示すかどうかは不明である。そこで、我々は、上司や同僚のサポートと若手医師の発言行動との関連が、バーンアウトやワーク・エンゲイジメントによって媒介されるのか、またどのように媒介されるのかを検討した。

材料と方法
参加者は301名の若手医師で、上司・同僚サポート、バーンアウト、ワーク・エンゲイジメント、音声行動に関する有効な質問票を含むウェブ調査に回答した。

結果
上司と同僚のサポートは、バーンアウトの低レベルとワーク・エンゲイジメントの高レベルと関連していた。ワーク・エンゲイジメントは、バーンアウトではなく、スーパーバイザーおよびピアサポートと発言行動との関連を媒介した。

考察

この研究では、オランダの若手医師を観察し、上司と同僚の両方からのサポートが、燃え尽き症候群の軽減とワーク・エンゲイジメントの向上に関連していることを明らかにした。興味深いことに、燃え尽き症候群は「発言行動」(積極的に発言し、改善提案をすること)には影響を及ぼさなかったが、ワーク・エンゲイジメントには影響を及ぼした。これらの行動は、同僚や上司からのサポートが十分であると報告した医師ほど示しやすかった。つまり、支援的な環境を整えることが、若手医師の職場への関与と積極的な参加を促進する可能性があるということである。

本研究が、上司や同僚からの支援と若手医師の発言行動との間に、仕事への関与が媒介することを示した初めての研究であることを強調している。キャリアの初期段階において学習者であると同時に介護者でもある若手医師は、同僚や上司のサポートを通じて価値や受容の感覚を得、それが仕事への関与を高める。若手医師の仕事への関与が高まれば高まるほど、改善提案を口にする機会が増え、その結果、所属する診療科の質向上が促進される。

しかし、この研究には一定の限界があった。調査結果は自己申告データに基づいているため、社会的望ましさのバイアスは排除できない。しかし、調査過程では匿名性が確保されており、このバイアスの潜在的な影響は軽減されている。さらに、本研究は横断的なデザインであるため、因果関係を確定的に立証することはできない。これらの限界にもかかわらず、この知見は多様な医療制度における他の関連研究と一致している。

調査結果は、ピアサポートプログラムや定期的なピアミーティングなど、ピアサポートと上司サポートを強化するための積極的な手段を採用すべきであることを示している。また、日々の診療における時間的プレッシャーを考慮し、指導のための時間を確保する必要性も示唆されている。上司は、若手医師が質改善の取り組みに参加することを奨励し、彼らの発言行動を支援すべきである。

これらの知見が他の医療システムに一般化可能かどうかを判断し、具体的な患者ケアの質向上に対する発言行動の影響を調査するためには、さらなる研究が必要である。