医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

脊椎手術を単独で行う技術を習得するには、どれくらいの経験が必要か?手術を成功させるために必要なマイルストーンとは?

How Much Experience is Required to Acquire the Skills to Independently Perform Spine Surgery? What Milestones are Needed for Successful Surgery?

Authors Fukushi R , Teramoto A , Yoshimoto M, Miyakoshi N , Kudo D , Emori M, Shimada Y , Yamashita T 

Received 4 March 2023

Accepted for publication 13 June 2023

Published 28 June 2023 Volume 2023:14 Pages 657—667

DOI https://doi.org/10.2147/AMEP.S411047

 

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目的

脊椎手術を単独で行うために必要な技術を習得するために必要な手術件数を評価する。

患者と方法

秋田大学または札幌医科大学の整形外科の脊椎チームに所属する整形外科医に、12種類の脊椎手技に関するアンケートを送付した。参加者は、(A)各手技を単独で行えるか、(B)上級医の補助があれば行えるか、(C)各手技を行えないかを尋ねた。(A)と答えた人には、必要な技術を習得するためには何回の手術が必要かを尋ねた。(B)または(C)と回答した人には、単独で手術ができるようになるには何回の手術が必要だと思うか尋ねた。また、参加者は手術訓練法に関する10問の質問に回答し、それぞれの方法の有用性を評価した。
結果

合計55名の脊椎外科医がアンケートに回答した。A群はC群に比べ、独立に必要な手術件数が有意に少なかった:上部頸椎手術(7.3/19.3)、前部頸椎除圧/固定術(6.7/28. 8)、頸椎後方除圧・固定術(9.5/27.3)、腰椎椎間板摘出術(12.6/26.7)、内視鏡下腰椎椎間板摘出術(10.2/24.2)、脊椎腫瘍切除術(6.5/37.2)、脊椎後弯症手術(10.3/32.3)であった。8割以上の参加者が、以下の方法が有効であると回答した: 「上級医が執刀医となり、回答者が助手・見学者となる手術」、「回答者が執刀医となり、上級医が助手となる手術」、「手術マニュアル・論文・教科書を用いた自己学習」、「ビデオ手術セッションによるトレーニング」であった。

考察

この考察では、外科医が特定の脊椎手術を単独で行えるようになるために必要な手術の回数について検討する。研究者らは、脊椎外科医が各手術に必要な技術を習得するためには、4~15件の手術を行う必要があり、その件数は手術の複雑さや外科医の過去の経験によって多少異なることを明らかにした。

外科医は通常、必要な経験を積むために12~15件の基本的な後腰椎手術を行う必要があります。これらの基本的な手技をマスターすれば、より複雑な手術のスキルは、通常10回以下の追加手術で習得できる。また、患者へのリスクを最小化するために、最初の12~15回の手術には上級医が同席してサポートすることを好むというデータも示された。

上部頸椎手術、頸椎前方除圧・固定術、頸椎後方除圧・固定術、腰椎椎間板切除術、脊椎腫瘍切除術、脊椎後弯症手術などの特定の手技は、その複雑さと外科医が行う機会が少ないことから、より多くの練習が必要であることが明らかになった。これらの結果は、外科医が必要な経験を積めるように、これらの手技を頻繁に行う研修病院を選ぶことの重要性を強調している。

回答者の大多数は、上級医に手伝ってもらうこと、その手技を教えた上級医から学ぶこと、教科書、研究論文、講義、手術ビデオを利用することが、効果的なトレーニング方法であると考えていた。しかし、50%以上の参加者は、動物を使った手術トレーニングは効果がないと考えていた。死体、シミュレーション、バーチャルリアリティなど、特別な器具を必要とするトレーニング方法の有効性については、結果はまちまちであった。

若く経験の浅い参加者は、上級外科医と比較して、単独で実施するために多くの手術を必要とした。個人的な意見ではなく、年齢や経験年数によって結果を層別化することで、より適切な情報を提供することができる。しかし、経験の浅い若い医師の中にも、優れた手術技術を持つ者がいるかもしれない。

この研究は、一般的な整形外科手術とは対照的に、脊椎外科手術に必要な手術回数に特化している点で斬新である。研究者らは、自己評価、回答率の低さ、調査に参加した外科医のほとんどが行った手術件数の少なさなど、この研究にはいくつかの限界があることを認めている。

結論

経験レベルの異なる外科医のさまざまなニーズを考慮に入れて、脊椎外科医のための効率的なトレーニングシステムを開発する必要がある。