医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学部における総合診療に対する文化的態度: GPカリキュラム指導者の経験

Cultural Attitudes towards General Practice within Medical Schools: Experiences of GP Curriculum Leaders
Emily CottrellORCID Icon &Hugh Alberti
Received 05 Sep 2022, Accepted 12 Jun 2023, Published online: 12 Jul 2023
Download citation https://doi.org/10.1080/14739879.2023.2225477 

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/14739879.2023.2225477?af=R

 

はじめに
英国の医学部カリキュラムは、将来の医師全員にジェネラリストとしてのスキルを身につけさせ、総合診療のようなジェネラリスト専門分野への採用を増やすために、より地域に焦点を当てたジェネラリスト的なアプローチになるよう迫られている。しかし、英国の学士課程における総合診療の教育量は横ばいか減少している。総合診療を否定し、貶めるという形で過小評価されていることは、学生の視点からますます認識されるようになっている。

目的
総合診療カリキュラムリーダーが経験した、医学部における総合診療に対する文化的態度を探る。

方法
英国医学部の総合診療カリキュラムリーダー8名を対象とした半構造化面接による質的研究。多様性を考慮した選択的サンプリングを用いた。インタビューは内省的な主題分析を用いて分析した。

調査結果
総合診療に対する万華鏡のような態度」、「総合診療に対する日常的なあからさまな否定」、「総合診療を過小評価する隠れたカリキュラム」、「総合診療の価値:代表、認識、尊重」、「他者との関係、自分自身との関係」、「権力、エンパワーメント、脆弱性」、「機会としてのパンデミック」の7つのテーマが特定された。

総合診療に対する万華鏡のような態度: 総合診療に対する態度は、参加者によって大きく異なっていた。ある者は、この分野の複雑さを認識するようになり、より肯定的な見通しにシフトしていると認識していた。しかし、総合診療に対する否定的な意見も見られた。

総合診療に対するあからさまな「日常的」否定: 医学部内では、総合診療に対する否定的な見方や誹謗中傷が露骨に存在し、それは臨床医に由来することが多い。このような否定的な見方は、より広範な社会やメディアの態度に影響されていると考えられていた。

総合診療の価値: 代表、認識、尊重: 参加者は、特に意思決定や人員配置における代表を通して、総合診療が評価されている兆候を見た。また、カリキュラム開発における評価も、総合診療が評価されていることの表れとして挙げられた。

総合診療を過小評価する隠れたカリキュラム: 総合診療は他の診療科に比べて劣っている、あるいは標準以下であるといった否定的な見方が、医学部文化に根強くあることが認識されていた。また、総合診療に対する構造的・経済的な障壁とともに、マイクロアグレッションや疎外も指摘された。

他者との関係、自分自身との関係: 参加者は、医学部内では「内集団」と「外集団」のメンタリティがあり、総合診療や他の専門科は「他者」であると認識した。また、多くの参加者が、自信喪失や不十分さを感じていることを明らかにした。

権力、エンパワーメント、脆弱性: 参加者は、医学部文化における力の不均衡について言及し、いじめや脅迫と思われる例もあった。また、医学部という環境の中で総合診療を守らなければならないという意識もあった。

機会としてのパンデミック: COVID-19のパンデミックは、総合診療の強みをアピールする機会であると考えられた。参加者は、患者の治療から新しい教育方法の導入まで、危機に対処する総合診療の適応力を強調した。

考察

総合診療クリニカル・リーダー(GPCL)の、医学部内および医学部間での総合診療に対する多様で発展的な見方についての認識が明らかにされた。露骨な否定から高い評価まで、様々な態度が浮き彫りになった。あからさまな否定は主に臨床医に起因するものであったが、医学部には「隠れたカリキュラム」と呼ばれる、総合診療に対する軽蔑と否定の、より微妙で根底にある底流があると認識されていた。

さらに、医学部の文化には大きな隔たりが見られ、総合診療/ジェネラリズムに比べ、病院/スペシャリズムがより支配的であると認識され、評価されていた。この違いは「われわれ対彼ら」という感覚をもたらし、潜在的な緊張や対立を助長した。

しかし、総合診療を支持するリーダーや、総合診療医に影響力のあるポジションが与えられるなど、総合診療に対する評価が高まっていることも示された。総合診療に対する文化は、GPCLの仕事体験に影響を与え、支援的で包括的な文化は、前向きでやる気を起こさせると考えられた。

また、COVID-19の大流行が総合診療の強みを示す機会となり、医学部における文化的評価の増加が観察されたことを示唆している。

本研究の限界としては、単一の階層からのサンプリング、研究者の経歴や経験による否定的な意見に注目する可能性などが挙げられる。本稿では、総合診療に対する医学部文化をより深く理解するために、エスノグラフィーを用いて、学生や大学スタッフを含む複数の文化的メンバーの視点を取り入れたさらなる研究を行うことを提案している。

結論

本研究は、General Medical CouncilのDuties of a Doctor(医師としての義務)に沿い、すべての専門医のためのチームワークと相互尊重の文化を育む方向に物語をシフトさせる必要性を強調している。