医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

卒後医学研修生がシミュレーション教育者になるための障壁と誘因の理解:質的研究

Understanding the barriers and enablers for postgraduate medical trainees becoming simulation educators: a qualitative study
Albert Muhumuza, Josephine Nambi Najjuma, Heather MacIntosh, Nishan Sharma, Nalini Singhal, Gwendolyn L Hollaar, Ian Wishart, Francis Bajunirwe & Data Santorino 
BMC Medical Education volume 23, Article number: 28 (2023) 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

はじめに 
シミュレーションに基づく学習(Simulation-based Learning:SBL)が医療従事者にとって効果的な教育方法であることを示す証拠が増えつつある。しかし、SBLでは少人数のグループセッションを進行するために多くの教員が必要となる。他の多くのアフリカ諸国と同様に、ウガンダのMbarara University of Science and Technology(MUST)には多数の医学生がいるが、シミュレーションの訓練を受けた教員が少ないなど、リソースが限られている。卒業後の医学研修生(Postgraduate medical trainees:PG)は、学部生の臨床教育に携わることが多い。学部医学教育(undergraduate medical education:UME)において持続可能なSBLを確立するためには、PGの支援が不可欠であり、PGがシミュレーション教育者になるための誘因と障壁を理解することが極めて重要である。

調査方法
目的別サンプリングを行い、PGとの詳細なインタビュー(IDI)、大学職員とのキーインフォーマントインタビュー(KII)、PGとのフォーカスグループディスカッション(FGD)を5~10名のグループに分けて実施した。データ収集ツールは、Consolidated framework for implementation research (CFIR) ツールを用いて開発された。データは、RADaR(Rigorous and Accelerated Data Reduction)手法を用いて分析された。

結果
7回のIDI、7回のKII、4回のフォーカス・グループ・ディスカッションを実施した。障壁として、時間的制約、シミュレーション学習の転用に対する否定的な態度、医療シミュレーション機器の不足、PGsカリキュラムに医療シミュレーションの実施が組み込まれていないことが挙げられた。実現可能な要因としては、医学生、PGおよび医療従事者が医療シミュレーションのメリットを認識していること、診療科の姿勢が良好であること、PGがシミュレーション教育者になることに熱心であること、シミュレーション教育者の職務に対する認識が向上していることが挙げられた。参加者は、主要な関係者のシミュレーションに対する感化、PG教育者のトレーニングと動機付け、およびPGを教育者として関与させる医療シミュレーションプログラムの影響評価を推奨した。

figure 1

推奨事項
今後のカリキュラム変更において、PGシミュレーションセッションを異なる診療科のスケジュールに合わせて調整することを推奨する。シミュレーション教育者トレーニングコースは、各診療科のスケジュールに都合よく合うように設計されるべきである。PGシミュレーション教育者が医学部学生の成績に与える影響を評価し、このプログラムの有効性を示し、その魅力を高めることを推奨する。十分なロールモデルを作成し、訓練を受けたPG教育者の努力を促すために、PGが進行するシミュレーションセッションの指導に教員が関与することを推奨する

結論
結論として、本研究はPGを医療シミュレーション教育者として参加させることは、ベッドサイドでの臨床教育を補完し、学部生および大学院生双方にとって有益であると認識されていることを示している。PGはシミュレーション教育者として訓練を受けることに熱心であるが、カリキュラムの中にSBLトレーニングが含まれていることを望んでいる。PGによるシミュレーションセッションを異なる診療科の時間割に組み入れ、スケジュールの重複や時間的な制約を受けることなく参加できるようにすることが必要である。主な診療科を巻き込むことで、プログラムのオーナーシップを促進することができる。