医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

日本の医学生が情報科学技術を活用するために必要な能力:横断的研究

Competencies required to make use of Information Science and Technology among Japanese medical students: a cross-sectional study
Yuma Ota, Yoshikazu Asada, Makiko Mieno & Yasushi Matsuyama 
BMC Medical Education volume 24, Article number: 840 (2024) 

bmcmededuc.biomedcentral.com



背景

医学生にとって情報科学技術(IST)の活用能力は必須である。 本研究では、ISTの利用に関する自己評価が低い学習目標とコンピテンシーを明らかにし、医学生の自己評価を向上させる要因を明らかにした。

方法

2022年11月から2023年2月にかけて、全国82校の医学部6年生を対象にアンケートを実施した。

結果

コンピテンシーの自己評価

日本の医学生情報科学技術(IST)のコンピテンシーについて自己評価した結果、学習目標ごとに大きな差があることがわかりました。主な結果は以下の通りです。

  1. 高い自己評価:

    • IT-01-02-01: 医療データの管理と保存の原則を理解し、電子カルテの適切な使用と個人情報保護に関する法律や倫理基準に従うこと(平均3.50)。
    • IT-01-02-02: 医療専門家としてソーシャルメディアを適切に使用することを理解し実践すること(平均3.37)。
  2. 低い自己評価:

ロジスティック回帰分析

低く評価されたコンピテンシーの改善に関連する要因を特定するために、ロジスティック回帰分析が実施されました。その結果、以下の要因が統計的に有意であることが示されました。

  1. IT-01-01-02:

    • IT-03-01クラスの受講(オッズ比1.62、p=0.02)。
    • IT-03-02クラスの受講(オッズ比1.67、p=0.03)。
    • 問題解決型学習の経験(オッズ比1.44、p=0.03)。
  2. IT-01-01-03:

    • IT-02-02クラスの受講(オッズ比1.56、p=0.04)。
    • IT-03-02クラスの受講(オッズ比1.97、p<0.01)。
    • 問題解決型学習の経験(オッズ比1.41、p=0.04)。
  3. IT-02-02-01:

    • IT-02-01クラスの受講(オッズ比1.84、p<0.01)。
    • IT-02-02クラスの受講(オッズ比2.34、p<0.001)。
    • IT-03-01クラスの受講(オッズ比1.98、p<0.01)。
    • 学校外でのISTの最初の使用経験(オッズ比2.10、p<0.001)。

考察

この研究では、日本の医学生がISTに関するコンピテンシーをどの程度習得していると認識しているか、そしてその習得に影響を与える要因について検討しました。

主な発見

  1. 低い自己評価の理由:

    • 学生が規制や倫理問題に関する知識が不足していること。
    • 医療におけるISTの実践的な応用についての学習機会が限られていること。
  2. 改善のための要因:

    • 特定のISTクラスの受講が学生の自己評価の向上に関連していること。
    • 医学部入学前の問題解決型学習の経験が、ISTに関連する規制や倫理問題の理解に役立つこと。
    • 学校外でのISTの学習経験が、医療におけるISTの理解に寄与すること。

教育カリキュラムへの提案

  • ISTに関するクラスや問題解決型学習の導入を強化することが重要です。
  • 学生が自己学習習慣を養い、ISTに関する知識を継続的に学ぶ環境を整えることが求められます。

この研究の結果は、ISTに関するコンピテンシーの習得状況を改善するためのカリキュラム管理に有益なデータを提供するものです。

結論

医学生が学ぶことの意義を認識し、能動的な学習方法を確立し、実践的に活用する経験を積むことが重要である。