医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

英国における医学生の進路意向:全国横断研究(AIMS研究)

Career intentions of medical students in the UK: a national, cross-sectional study (AIMS study) 
http://orcid.org/0000-0003-1465-522XTomas Ferreira1, Alexander M Collins2, Oliver Feng3, Richard J Samworth3, Rita Horvath1 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 


目的

イギリスの現役医学生が、卒業後および研修医課程修了後にどのような進路を希望しているかを明らかにし、その背景にある動機を確認すること。

調査方法

イギリスの医学生を対象とし、非ランダムサンプリング法を用いた横断的、混合法調査。

調査地

General Medical Councilによって認可された英国の医学部全44校。

学生 イギリスの医学生全員に参加資格があった。調査サンプルは10,486名で、医学生人口の約25.50%であった。

成果測定 
医学生の卒業後および卒業後の進路意向

これらの進路意向の背景にある動機

医学生集団の特徴

人口統計学的要因と国民保健サービス(NHS)離職傾向との相関。

結果

参加学生の大多数(8806人/10 486人、83.98%)は、卒業後2年ともFPを修了する予定であり、半数以下(4294人/8806人、48.76%)はその後専門医研修を受ける予定であった。FP修了後の進路意向を学年別にサブ解析したところ、医学部に進むにつれて専門医研修に進む学生の意向が有意に低下していることが明らかになった。調査対象学生の約3分の1(3392人/10 486人、32.35%)は、医学を実践するために移住する意向があり、そのうちの42.57%(n=1444)は帰国するつもりはなかった。合計すると、2.89%の学生が完全に医学を離れるつもりであった(n=303)。報酬、ワークライフバランス、労働条件は、移住や離職に関する意思決定における重要な要因であることが確認された。性別、学校教育の種類、学費の種類、学歴に基づくサブグループ分析が行われた。調査対象の学生のうち、NHSで働くことの全体的な見通しに満足している、あるいは非常に満足していると回答したのはわずか17.26%であった。

考察

NHSは労働力不足に陥っており、2021年には約10,000人の医師が退職する。
多くの医師やコンサルタントがNHSからの離職や休職を考えている。
移住先として人気があるのは、給与が高く、ワークライフバランスが良く、英語が主要言語であるオーストラリア、ニュージーランドアメリカ、カナダなどである。
32.35%の学生が実習のために移住する意向で、半数近くは戻るつもりはない。
2.89%の学生が医師を辞めるつもりである。
21.11%の学生は、FP終了後、英国で研修以外の臨床職に就く意向である。
FP終了後すぐに専門医研修に入る学生の数は減少している。

限界

この研究は横断的なものであるため、学生の意向が時間の経過とともにどのように変化するかはわからない。
本研究は医学生全体の約25.50%を対象としており、選択バイアスが生じる可能性がある。
この調査は、学生の意思決定に影響を与えるすべての要因を捉えていない可能性がある。
学生である回答者は、NHSで働く現実について限られた知識しか持っていないかもしれない。

結論 
英国医学生の進路意向に関する調査は、英国学生の見解と進路意向を明らかにするものであり、調査対象者のうち、別の進路や移住を考えている者の割合が気になるところである。報酬、ワークライフバランス、労働条件などの要因に対処することは、医師の定着を高め、労働力計画の取り組みを改善する可能性がある。