医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

批判的意識の高い人材に向けたカリキュラムの刷新: ファカルティ・ディベロップメントの意義

Curriculum renewal towards critically conscious graduates: Implications for faculty development
Susan van Schalkwyk, Julia Blitz
First published: 12 September 2023 https://doi.org/10.1111/medu.15216

https://asmepublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/medu.15216?af=R

 

はじめに
保健医療専門職(HP)の教育者を支援するFDイニシアチブは、世界的にその範囲を拡大し続けている。HPのカリキュラム更新活動が、社会的説明責任、社会正義、健康の公平性といった問題に主治医として参加する生物医学的な焦点から脱却する必要性に影響されるにつれて、この活動はより重要になってきている。このことは、このような複雑な社会的構成要素を受け入れながら教育実践を変える必要があるHP教育者を、どのようにサポートするのがベストなのかという問題を提起している。

研究方法
この質的研究の研究課題は以下の通りである: 批判的意識と社会的アカウンタビリティの原則をカリキュラム刷新の一環として教育に取り入れることを期待されているHP教育者を支援するために、FDにはどのような意義があるのか?つの学士課程のHP教育者との11のフォーカス・グループ・ディスカッションとそれに続く11の個人面接から得られたデータをテーマ別に分析した後、さらなる分析を行い、ファカルティ・ディベロップメントに対するこれらの知見の意義に焦点を当てた。変革的学習理論と変化に関するモデルが、感化的な枠組みを提供した。

結果
我々の発見は、HP教育者の役割の拡大、ひいてはファカルティ・ディベロップメントの責任者の役割の拡大を指摘するものであった。3つの主要なアイデアが強調された: カリキュラムの刷新がFDの新たな必要性を喚起すること、変革を可能にするFDの性質、そしてFDの新たな焦点である。

1. ファカルティ・ディベロップメントの新たな必要性:

参加者は、刷新されたカリキュラムをナビゲートするためのFDの必要性を認識していた。
文化や価値観を変えることを目的としたカリキュラムを実施することは困難であり、教育者は自分たちの準備態勢に疑問を抱くかもしれない。
一度だけの介入ではなく、継続的なサポートが必要である。
ファカルティ・ディベロップメントの規模を拡大することが必要であり、特に分散型トレーニング・プラットフォームの導入が必要である。

2. 変化を可能にするファカルティ・ディベロップメント

参加者は、新しいカリキュラムでどのように教えるかについてのガイダンスを求め、コミュニティとの関わり、ネットワーク作り、対話を重視した。
特に批判的意識の面を教える際の指針が望まれた。
参加者は、不確かな点を明確にし、自信をつけるために、考察し、経験を共有し、内省する機会の必要性を表明した。

3. ファカルティ・ディベロプメントの新しい焦点:

ファカルティ・ディベロプメントは、カリキュラムの刷新から生じる複雑さに対処するために、カリキュラムを拡大する必要がある。
実現可能性、仕事量、変化に必要な感情的投資についての懸念が提起された。
参加者は、刷新されたカリキュラムから新しいアイデアを統合し、同僚にそれを採用するよう説得することの難しさを強調した。
社会的に公正なパラダイムの中に位置づけられる刷新の性質は、教育者と学生の両方の思考に挑戦するものであり、内省的で自己省察的な取り組みの必要性が強調された。

 

ファカルティ・ディベロップメントへの意義

継続的または縦断的な取り組み: 内省的な態度にとって重要な自己認識の向上などの利点がある。
コミュニティの構築: コミュニティは、教育と学習に対する学術文化の変化を促進することができる。
対話と批判的な内省を可能にする: ファカルティ・ディベロッパーは、HPの教育者に挑戦する「勇気ある対話」を促進すべきである。
明確なガイドラインのある対話: 会話は目的を持った対話的なものでなければならない。

教員開発者の課題

HP教育者が学生とどのような会話をするのか、そのモデルを示す必要がある。
脆弱性を示すことはリスクを伴うが、「知的な率直さ」はバランスの取れたアプローチとなりうる。
内省と対話には、時間と空間と自由が不可欠である。

 

結論
ファカルティ・ディベロップメント(FD)は、HP教育者の役割と責任をしばしば拡大するカリキュラム更新の文脈を含め、変化を可能にするために大きく貢献することができる。カリキュラムの刷新が基本的なカリキュラム原則の転換を目指すものである場合、この拡大された任務を受け入れるための支援を提供することは、ファカルティ・ディベロプメントにも同様に拡大された任務、すなわち批判的意識を育み、HP教育に変化をもたらすような批判的で対話的な診察を可能にするイニシアチブを求めることになる。このことは、ファカルティ・ディベロッパーとして、自分自身を鏡のように映し出し、このような拡大された支援の本質を考えることに挑戦するものである。