医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

学習者教育の引き継ぎ: 教育のサイロ化を超えて

Learner Education Handover: Moving Beyond Educational Silos
Shaw, Tammy MD, MMEd1; Mistry, Neel P. HBSc2; Caretta-Weyer, Holly MD, MHPE3; Humphrey-Murto, Susan MD, MEd4
Author Information
Academic Medicine 98(9):p 1095, September 2023. | DOI: 10.1097/ACM.0000000000005201

journals.lww.com

 

何が問題なのか?
- 医学教育は孤立したサイロで構成されており、研修の段階を超えた情報共有は限られている。
- コンピテンシーに基づく医学教育では、トレーニングと評価が個別化され、継続的で、成長志向の連続性が求められる。
- 学習者教育の引き継ぎ(Learner Education Handover:LEH)は、このような教育の継続性のギャップを解決する可能性を秘めているが、教員や研修生の3分の1が支持していない。

 

学習者教育の引き継ぎ
 - LEHとは、教育段階や指導医間で学習者に関する情報を共有することを指す。
- 教育の移行は、各臨床ローテーションの間、学部医学教育と卒後医学教育の間、そして患者チームの引き継ぎ中に指導医が変わる際に起こる。

 

実施上の課題 
- 限られたデータ: 学習者のパフォーマンスに関する経験的評価の欠如は、LEH の客観性を制限するかもしれない。
- LEH に対する複数の動機が不信につながる: 例えば、LEH が学習者の成長のためだけでなく、研修医選定のために使用される場合、LEH は懲罰的とみなされる可能性がある。

 

 

・学習者

縦断的な成長を可能にするオーダーメイドの教育経験を受ける。
偏った評価に起因する無用の汚名を経験する。
成績に対する不安が増大する。

・教育者

より効率的で方向性のある指導とフィードバックを提供する。
教授陣がその場限りの委嘱を決定する際に考慮すべきデータポイントを増やす。
偏った評価.
パフォーマンスの重要な要素を見逃してしまう可能性がある。

・システム

学習者の能力を早期に診断することで、患者の安全性を高める。
訴訟の懸念が生じる(学習者の守秘義務の侵害など)。
学習者の能力の誤診により、患者の安全性に懸念を生じさせる。

 

考えうる結果

LEH は学習者の能力を正しく特定する。学習者は、成長を促進し、各自が最高のパフォーマンス/潜在能力を発揮できるようにするための委託と指示されたフィードバックを受ける。

LEHは学習者の能力を強いと誤認している。学習者は、適切な管理ができない患者を担当する。患者の安全と学習者の健康が損なわれる可能性がある。

LEHは学習者の能力を弱いと誤認する。このレッテルは学習者に対する偏見を生み、それが永続化され、学習機会の減少につながる。

 

LEHのベストプラクティス

1. 目的:学習者の能力/パフォーマンスの継続的な向上を導く。初日から学習者のニーズに応えられるよう、より充実したプログラム準備の機会を提供する。

2. 成長: 成長:評価、フィードバック、受講者の内省を複数回繰り返すことにより、受講者の専門的な能力開 発とプロセスを整合させる。

3. 学習者主導: 学習者とともに作成する個別の学習計画と目標に焦点を当てる。

4. 標準化: すべての学習者に対して、引き継ぎ情報を標準化されたフォーマットで転移する。

5. コンテキスト: 適切な時期(研修医とのマッチング後など)に、学習者の改善をサポートするためのインフラ(コー チなど)が利用できるようにする。情報の共有を適切な個人に限定することで、情報の悪用から保護する。