医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

健康関連の学生が心理的な問題に対して助けを求めるようになる要因の検証

Examining factors that drive health-related students to seek help for psychological challenges
Nidwaree Sojindamanee1, Sirichai Hongsanguansri2, Somboon Hataiyusuk3, Nareemarn Neelapaichit4, Karn Suttapanit5, Ponjit Jithavech6 and Komsan Kiatrungrit2

www.ijme.net

 

目的

本研究の目的は、保健関連の学生におけるメンタルヘルスの問題の有病率とメンタルヘルスのケアを受ける割合を明らかにすること、およびメンタルヘルスのケアを受けることに関連する要因を明らかにすることである。

方法

2021年度に某大学医学部の学生を対象に横断的オンライン調査を実施した。合計832名の学生が、メンタルヘルス上の問題およびメンタルヘルスケアの受診に影響する要因を測定するオンライン調査に自発的に回答した。データの分析には、t検定、ピアソンのカイ二乗検定、二値ロジスティック回帰分析などの記述統計および分析統計が用いられた。

結果

参加者のうち、46.80%(n=389)が精神的健康問題を経験したと報告したが、そのうち精神的健康ケアを求めたのは16.97%(n=66)に過ぎなかった。二項ロジスティック回帰分析の結果、女子学生(OR = 2.63 (1.08 - 6.43))とLGBTQ(OR = 4.26 (1.36 - 13.37))、および専門家に対して肯定的な態度を持つ学生(OR = 1.10 (1.02 - 0.19))は、そうでない学生よりも正式なメンタルヘルスケアを求める可能性が高いことが明らかになった。

この研究では、保健関連の学生が直面する精神的な問題と、助けを求めるパターンに焦点を当てた。主な調査結果は以下の通り:

・かなりの数の保健系学生が精神衛生上の問題を訴えていた。ほとんどの学生が友人や家族に助けを求めたが、専門家に助けを求めたのは少数派であった。
自殺念慮、自殺計画、自殺未遂の割合は、以前に報告された一般の大学生の数値よりも高かった。不安レベルも高かった。これらの相違は、保健学研究における競争環境、医学的知識による自殺手段へのアクセス、Covid-19パンデミックのような追加的ストレス要因に起因すると考えられる。
自傷行為うつ病の自己報告による発症率は、他の研究に比べて低かった。この食い違いは、本研究でこれらの状態を定義するために用いられた基準のせいかもしれない。
・学生の大多数が身近な知人に相談したが、専門家に相談したのはごく一部であった。これは、1年次のメンタルヘルス研修が、このような問題に対する理解を深め、スティグマを軽減するためかもしれない。
・カウンセリングを受けたことのない参加者は少数派であった。先行研究によると、特に医学生は、助けを求めることを個人的な失敗のしるしとみなす人がいる。
・女子学生やLGBTQの学生は、男子学生に比べ、専門的なメンタルヘルスケアを求める傾向が強かった。このことは、女性やLGBTQの方が精神的な助けを求めることに前向きであるという先行研究と一致している。
・学習プログラムによってメンタルヘルスケアを求める割合は異なり、奨学金を利用している学生は専門家の指導を求める傾向が強かった。助けを求める積極的な態度も重要な役割を果たした。
・両親との関係が良好な学生ほど、両親からのサポートを求める傾向が強かったが、両親の愛着は専門家の助けを求める決断に影響を与えなかった。
・この研究は洞察に富んでいるが、いくつかの限界があった。横断的であること、対象が1つの大学に限定されていること、内的一貫性に問題がある可能性のある質問票を使用していること、自己報告に依存していること、潜在的な変数をすべて考慮していないこと、などである。

結論

本研究結果は、健康関連の学生に精神的健康問題が蔓延しているにもかかわらず、正式なメンタルヘルスケアの受診率が低いことを示している。この問題に対処するためには、メンタルヘルス・スクリーニング・プログラム、メンタルヘルス・ケアに関する知識と態度の改善、保健系学生と関わる教職員に対するメンタルヘルス研修が必要である。今後の研究では、保健系学生のメンタルヘルス・サービスの利用率を高めるための介入策を検討すべきである。