医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

英語を母国語としない医学生による英語論文執筆を強化する人工知能の可能性を探る-ChatGPTの教育的応用

Exploring the potential of artificial intelligence to enhance the writing of english academic papers by non-native english-speaking medical students - the educational application of ChatGPT
Jiakun Li, Hui Zong, Erman Wu, Rongrong Wu, Zhufeng Peng, Jing Zhao, Lu Yang, Hong Xie & Bairong Shen 
BMC Medical Education volume 24, Article number: 736 (2024) 

bmcmededuc.biomedcentral.com

背景

医学生の教育において論文執筆は非常に重要であり、英語を母国語としない学生にとっては明確な課題となっている。 本研究の目的は、このような学生の英語論文作成能力を向上させるために、大規模言語モデル、特にChatGPTを採用することの有効性を調査することである。

方法

中国からの医学部3年生25人のコホートを募集した。 研究は2つの段階から成る。 まず、学生にミニ論文を書かせた。 次に、2週間以内にChatGPTを使用してミニペーパーを修正することが求められた。 ミニ論文の評価は、構造、論理、言語の3つの主要な側面に焦点を当てた。 評価方法としては、ChatGPT-3.5とChatGPT-4を使用し、手動採点とAI採点の両方を取り入れました。

結果

ChatGPTをライティング支援に導入した結果、手動採点では4.23点の顕著な伸びを示しました。 同様に、ChatGPT-3.5モデルによるAI採点では4.82点の増加、ChatGPT-4モデルでは3.84点の増加が見られた。 これらの結果は、アカデミック・ライティングのサポートにおける大規模言語モデルの可能性を浮き彫りにしている。 統計解析の結果、手動採点とChatGPT-4採点の間に有意差はなく、ChatGPT-4が教師の採点プロセスを支援する可能性を示しています。 アンケートからのフィードバックでは、92%の学生がライティングの質の向上を認め、84%の学生が言語スキルの向上を指摘し、76%の学生が学術研究のサポートにおけるChatGPTの貢献を認識しており、概して肯定的な反応を示しています。

考察の詳細

学生の論文品質の向上

この研究では、ChatGPTを使用することで学生の論文品質が全体的に向上することが確認されました。特に、構造、論理、言語の各側面で有意な改善が見られました。この結果は、ChatGPTが文法的な修正や論理的な構成を強化する能力があることを示しています。また、学生たちがChatGPTの助けを借りて、より明確で洗練された論文を書くことができたことを示唆しています。

ChatGPTによる採点支援の可能性

ChatGPT-4のスコアリング結果と手動スコアリング結果の間に有意差が見られなかったことから、ChatGPT-4が教師の採点支援に有効である可能性が示されました。これにより、教師の負担を軽減し、より多くの時間を学生へのフィードバックや個別指導に充てることができると考えられます。ただし、AIモデルの採点が完全に人間の教師を代替するには至らず、教師の専門知識やコンテキスト理解が依然として重要です。

学生のフィードバック

アンケート結果から、学生の多くがChatGPTの使用を肯定的に捉えていることが分かりました。特に、論文の質の向上や言語スキルの向上を実感した学生が多く、ChatGPTが学術研究の支援に役立つと感じている学生も多数いました。このことから、ChatGPTが学生の学習意欲や自己効力感を高める可能性があることが示唆されます。

ChatGPTの限界と課題

ChatGPTにはいくつかの限界も存在します。まず、情報の信頼性に関する懸念があります。AIが生成する情報が常に正確であるとは限らず、誤情報が含まれる可能性があります。また、ChatGPTは創造的な思考やコンテキスト理解が不得意であり、人間の教師が提供するような深い理解や洞察を提供することは難しいです。

さらに、言語や文化の違いによる問題も指摘されています。異なる言語での入力に対して正確な応答を生成することが難しい場合があり、医療教育においては特に注意が必要です。文化的なコミュニケーションスタイルの違いも、情報の伝達に影響を与える可能性があります。

今後の展望

この研究は、ChatGPTのような大規模言語モデルが医療教育において有望なツールであることを示しました。しかし、これらのツールを効果的に活用するためには、いくつかの課題を解決する必要があります。例えば、AIモデルの精度と信頼性を向上させること、文化的および言語的な多様性に対応すること、そして倫理的な考慮事項を十分に検討することが求められます。

今後の研究では、これらの課題に対処しつつ、ChatGPTや他のAIツールの医療教育への統合をさらに進めることで、学生の学習成果を高め、教育の質を向上させる方法を探ることが重要です。

この研究は、技術を活用した学習の進展と医療教育のニーズに応える新しい視点を提供しており、今後の研究や実践においてさらなる検討が必要です。