医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学教育研究における質的アンケートの使用

 Using Qualitative Questionnaires in Medical Education Research. 

Tombs M, Strange H.

Perspect Med Educ. 2024 May 6;13(1):280-287. doi: 10.5334/pme.1102. PMID: 38737397; PMCID: PMC11086583.

www.ncbi.nlm.nih.gov

医療専門職教育コースのほとんどの学生は、質的研究の世界に初めて触れる。研究プロジェクトを設計するという課題に直面すると、彼らはしばしばデータ収集方法として質問票を使用することに引きずられ、一般的に自由形式の質問を利用することだけが質的研究の設計であると思い込んでしまいます。厳密性の基準を満たす質問票を設計することは困難であり、この一般的な思い込みは、質的存在論に対する経験の浅さや誤解、また質的質問票の設計と開発に関する方法論的文献の不足を反映しています。本稿は、研究指導者だけでなく学生も念頭に置いて書かれており、質的アンケートを使用する際の意思決定プロセスや正当性を明らかにすることを目的としている。学生が実施した研究の事例や、より広範な文献をもとに、(1)質的研究の価値を優先し、(2)質問票を作成する際に厳密な設計プロセスを踏むことで、質的質問票がいかに豊かで意味のある調査結果を生み出すことができるかを示します。最後に、このアプローチの利用を検討している人々に、厳密な質的質問票を作成するための簡単な枠組みを提供することで、このアプローチを締めくくる。

 

定性的アンケートのメリットと実際的な利点

  • アンケートは時間とリソースの節約ができるため、忙しい臨床医や研究者にとって実用的である。
  • オンラインアンケートは匿名性が高く、広範な参加者から多様な視点を収集するのに適している。
  • 標準化されたアンケート設計により、データの比較と分析が容易である。

 デザインプロセス

定性的アンケートの設計には以下のステップが必要です。

ステージ1: 文献レビュー

  • 質の高いアンケート項目を作成するために、関連文献をレビューし、主要なテーマやトピックを明確にする。

ステージ2: ステークホルダーとの相談

  • 潜在的な参加者や専門家と相談し、研究デザインやアンケート項目についてフィードバックを得る。

ステージ3: アンケートの設計と開発

  • 明確で誤解のない質問を作成し、参加者の多様な経験や視点を引き出すよう工夫する。

ステージ4: アンケートのパイロットテスト

  • 実際の参加者を対象にパイロットテストを行い、アンケートの機能や目的達成度を評価する。

ステージ5: 回答の分析

  • データ収集と分析を並行して行い、テーマの飽和状態を確認しながら必要に応じて質問を修正する。

具体的な質問の例

オープンエンド質問

  1. 経験の記述: 「医療教育における役割モデルとしての体験について具体的に教えてください。」
  2. 影響の詳細: 「その体験があなたの学びや将来のキャリアにどのように影響したかを説明してください。」

クローズド質問

  1. 頻度の確認: 「どのくらいの頻度でリモート授業を行っていますか?」
  2. 方法の選択: 「リモート授業で使用している主なテクノロジーは何ですか?」(選択肢を提示)

アンケート作成のポイント

  • 明確さ: 質問は簡潔で具体的にし、参加者が誤解しないようにする。
  • 長さ: アンケートは短く、必要最低限の質問に絞る。
  • 匿名性: 参加者の匿名性を確保し、自由に意見を述べられる環境を整える。