医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

ファカルティ・ディベロップメントの現在の経験、期待、そして将来の役割

Current Experiences, Expectations, and Future Roles of Faculty Development
Elif Bilgic, Spencer van Mil & Ereny Bassilious 
Medical Science Educator (2023)

link.springer.com

 

はじめに
学部レベルでのFD(Faculty Development)プログラムの成功には複雑さがあり、その要因の多くは個人レベルからシステムレベルまで多岐にわたる。本研究の目的は、FDとはどのようなものかという教員の認識、FDに関する過去/現在の経験、FDに参加することの重要性、障壁、促進要因に関する認識を探ることである。

方法
本研究は、社会構築主義の観点から導かれた単一施設の質的記述研究である。小児科の教員に、1グループ4~5名で構成される1時間のフォーカスグループに参加してもらった。すべてのセッションはバーチャルで行われ、書き起こしのために音声録音された。書き起こされたデータに対して、内省的な主題分析が行われた。

結果
全体として、5つの主要テーマが特定された: (1)教員にとってのFDの目的/意味、(2)FDに関する教員の認識、(3)FDで教員が直面する課題、(4)FDのデザインと教員への提供、(5)FDと継続的専門能力開発(CPD)の比較。主な発見としては、(a)柔軟で個別化されたFDカリキュラムを作成すること、(b)学部は教員をコミュニティとしてまとめることに重点を置くこと、(c)学部は学部全体の参照点として使用できるFDのより広範な定義を開発すること、などが挙げられた。

考察

 (1)教員にとってのFDの目的/意味

教員は従来のFDの定義を超え、さまざまな分野の多様なトピックを含むより広範な視点を提案している。

FDは特定のキャリアやスキル開発を中心に据えるべきであるが、特に教員の期待が絶えず変化する中、進化する定義やニーズを考慮し、柔軟性を保つべきである。

(2)FDに関する教員の認識

教員のニーズは、様々な診療ルーチン、新たな技術、医学と医学教育における文献の拡大により変化する。
学部全体に適用されるFDの一般的なテーマがある一方で、個々の学部には独自の任務、ニーズ、成長構造がある。
メンターシップは、各部門のFDイニシアチブに不可欠な要素として浮上し、部門内にメンターシップの機会を設けることの重要性が強調された。

(3)FDで教員が直面する課題

主な課題としては、時間的制約、競合する関心事(臨床責任や家族との約束など)、圧倒的な数のFDリソースが挙げられる。
FDのニーズは教員のキャリアステージによって異なるため、特定の能力開発目標に合わせた個別の機会が必要である。
メンターシップはFDを導き、最適化する強力なツールであるが、両者の信頼と長期的なコミットメントが必要である。

(4)FDのデザインと教員への提供、(5)FDと継続的専門能力開発(CPD)の比較。

各部局は、FDをより柔軟かつ個別化し、教員間の共同体意識を醸成することで、FDを強化することができる。
ハイブリッド型のFDセッションや、教員に保護された時間を設けることは、柔軟性の必要性に対処するための潜在的な解決策である。
FDの取り組みが進化する教員の期待に確実に応えるためには、定期的なフィードバックプロセスとニーズ評価が極めて重要である。
COVID-19の大流行時にバーチャルFDに移行したことで、(個人的なつながりの希薄化などの)課題と(アクセスのしやすさと柔軟性の向上という)利点の両方がもたらされた。


限界:

本研究は単一の学科に限定されており、一般化可能性に影響を及ぼす可能性がある。しかし、その意図は広範な適用性ではなく、特定部署内での経験の調査であった。
部門リーダーの1人がセッションの進行役を務めたため、バイアスがかかる可能性がある。

結論
FDの役割に関する一貫した理解は存在するが、特に個別化されたニーズやセッションのタイミングに関する障壁はまだ残っている。今後のFDは、参加を促し、学部レベルでの教員の進化するニーズに応えるために、柔軟で、個別化され、技術的に強化されたものであるべきである。