医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

シリア人医学生による相互身体診察の受け入れとその関連要因:横断的研究

Syrian medical students’ acceptance of peer physical examination and its associating factors: a cross-sectional study
Jameel Soqia, Mohamad Ashraf Shamaa, Dima Alhomsi, Laila Yakoub-Agha, Mhd Basheer Alameer, Rawan Alhomsi, Mohmad Nour Hakok, Rim Khalil & Mazen Zaitouna 
BMC Medical Education volume 22, Article number: 898 (2022) 

bmcmededuc.biomedcentral.com

背景
本研究は、中東社会におけるPeer Physical Examination(PPE)の受容性とその関連要因、およびCovid-19パンデミック時のPPE受容性を評価することを目的としたものである。欧米で行われた複数の研究において、PPEの受容性は高いとされているが、中東や低所得国でのPPE受容性を調査した研究はほとんどない。

調査方法
臨床学年の学生を対象に、ソーシャルメディアを通じてアンケートを実施した。回収した医学生は657名で、回収率は74.5%であった。アンケートは、人口統計学的情報とPPEの経験の有無を収集した。5段階リッカート尺度を用いて、PPEの受容度、PPEに影響を与える要因、COVID-19パンデミックの影響について評価した。また、学生が受け入れるであろう身体の部位についても検討した。参加者のデモグラフィックとその他の詳細の間の関連は、独立標本T検定などを用いて検定し、p値<0.05を有意とした。

結果
医学生の80%がPPEを受け入れ、3%が受け入れず、17%が中立であった。男性の方が統計的に有意にPPEを受け入れる割合が高かった(M=5段階中3.94)。また、女性は男性よりも異性に診察されることへの受容度が低かったが、異性に診察されることは嫌がらないことがわかった。さらに、検査部位として最も拒否されるのは鼠径部(大腿部)で20%、次いで乳房(23%)であった。

大学間、学力差による統計的な有意差はなかったが、宗教と社会がPPEの受け入れに統計的に有意な影響を与え、宗教は男性よりも女性に影響を与えた(p-値=0.002)。

COVID-19パンデミックの際、70.8%の学生がPPEを支持し、6.8%が支持せず、22.4%が中立であった。COVID-19パンデミック時のPPEの受容・支持については,男女間に有意差はなかった。

結論
80%の受け入れ率を誇るPPEは、シリアの大学に存在しない生活モデルに対する効果的な代替案である。しかし、社会が複雑になればなるほど、学習手段には多くの課題がある。

本研究では、宗教をはじめとする多くの繊細な課題(身体の敏感な部位、性別、安全な環境、チューターの存在)が、シリアの学生が快適にPPEを実践し、自信をつけ、臨床スキルをより高いレベルに引き上げることを妨げていることを明らかにした。決定的な解決策にはまだ到達していませんが、いくつかの重要なアイデア(PPEグループを自由に選択できるなど)は利用可能であり、PPEに参加する真の意欲に向けて大きな変化をもたらすことができます。