医学教育つれづれ

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PEARLSヘルスケアディブリーフィングの認知補助がファシリテーターの認知負荷、作業負荷、ディブリーフィングの質に与える影響:パイロットスタディ

Impact of the PEARLS Healthcare Debriefing cognitive aid on facilitator cognitive load, workload, and debriefing quality: a pilot study
Michael Meguerdichian, Komal Bajaj, Rachel Ivanhoe, Yiqun Lin, Audrey Sloma, Ariel de Roche, Brian Altonen, Suzanne Bentley, Adam Cheng & Katie Walker 
Advances in Simulation volume 7, Article number: 40 (2022)

advancesinsimulation.biomedcentral.com

 

背景
Promoting Excellence and Reflective Learning in Simulation(PEARLS)ヘルスケアディブリーフィングツールは、ディブリーフィングを構造的に展開するために設計された認知補助ツールである。

PEARLSヘルスケアディブリーフィングツールは、ディブリーフィングのためのPEARLSモデルの概要を5つの段階(場面設定、反応、説明、分析、適用・要約)で表形式にしたものである。この表は、各段階の目的、課題、およびフレーズの例を示しており、ツールの表側または最初のページに記載されている。分析段階は、2ページ目(または裏面)に展開され、ディブリーフィングで考慮すべき主要なパフォーマンス領域が定義されている。さらに,PEARLS モデルを定義するブレンドアプローチを構成する 3 つの主要な教育戦略を概説し,スクリプト化する.このツールは、モデルを合理化し、ファシリテーターがディブリーフィング中にキーフレーズにアクセスしやすくし、PEARLSの効果的な実施を支援するものである。

このツールは、ディブリーフィングの複雑さを解消することにより、ファシリテーターのディブリーフィングスキル習得能力を高め、それによって初心者のファシリテーターのディブリーフィングの質を向上させる可能性を持っている。本実験では、本ツールがファシリテーターの認知負荷、作業負荷、およびディブリーフィングの質に与える影響を評価することを目的とした。

journals.lww.com

*日本語版

https://debrief2learn.org/wp-content/uploads/2022/02/PEARLS-Pocket-Card-5.8x7.2-PNG-JP-Alt.pdf

 

研究方法
PEARLSヘルスケアディブリーフィングツールの使用経験がないNew York City Health + Hospitals Simulation Fellowshipのフェロー14名を7名ずつ2群に無作為に分け、介入群には認知補助ツールを装備し、対照群にはツールを使用しないこととした。両群とも8時間のディブリーフィングコースを受講していた。両群は、ビデオ撮影された3つの模擬イベントのデブリーフィングを行い、その体験の認知負荷と作業負荷を、それぞれPaas-MerriënboerスケールとNASA-TLX(National Aeronautics and Space Administration task load index)生データを用いて評価した。そして、ディブリーフィングのパフォーマンスについては、Debriefing Assessment for Simulation in Healthcare(DASH)を用いて、ディブリーフィングの質を評価した。認知負荷の測定は、Paas-Merriënboerスケールで行い、Wilcoxon rank-sum検定を用いて比較した。作業負荷とディブリーフィングの質に関する指標は、混合効果線形回帰モデルを用いて分析した。

 

結果
ツールを使用した者は、3回のディブリーフィングのうち2回において、認知負荷の中央値が有意に低かった(ツール使用対ツール不使用の中央値:シナリオA 6対6、p=0.1331;シナリオB 5対6、p=0.043;シナリオC 5対7、p=0.031)。作業負荷の要求に関する複合スコアの減少(NASA-TLXの平均差-4.5、95%CI -16.5~7.0, p=0.456)およびディブリーフィングの質に関する複合スコアの改善(DASHの平均差2.4、95%CI -3.4~8.1, p=0.436)におけるツール効果の違いは検出されなかった。

結論
本稿では、PEARLSヘルスケアディブリーフィングコグニティブエイドの有用性を、認知負荷、作業負荷、ディブリーフィングの質への影響という観点から考察した。パイロットスタディではあるが、本ツールをディブリーフィングのスキル習得に適用することで、認知的負荷が軽減され、教員の能力開発を支援する機会になることが示唆された。また、本ツールが作業負荷を軽減し、ディブリーフィングの質を向上させるという有意な証拠は得られなかった。この研究はパイロット的なものであり、このツールの影響を本当に理解するためには、より大きなサンプルサイズを調べるためにさらなる研究を実施する必要がある。我々は、認知的補助を探求するための構造化されたアプローチについて説明し、ディブリーフィングツールの今後の研究、および新しいツールの改良と開発のためのモデルを提供することを期待している。この原稿は、このようなインパクトのある会話に参加するファシリテーターを効率的に訓練する方法の発見と改良に新たな一歩をもたらすものである。