医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

外科教育における左利きの医学生の不公平な経験

The Inequitable Experiences of Left-Handed Medical Students in Surgical Education
Gilbert, Timothy J. MD; Anderson, Maia S. MD, MS; Byrnes, Mary E. PhD, MUP; Kim, Gloria Y. MD, MS; Solano, Quintin P. MD; Wan, Julian H. MD; Sack, Bryan S. MD
Author Information
Academic Medicine 99(8):p 868-873, August 2024. | DOI: 10.1097/ACM.0000000000005627

journals.lww.com



目的

左利きの医学生は、教育資源の不足、左利きに特化したトレーニングの不足、外科的左利きの汚名の広まりなど、外科手術における独自の教育的障壁と闘っている。 本研究の目的は、左利きの医学生の外科手術経験を明らかにすることで、教育者がこれらの学生の境遇をより深く理解し、配慮して行動できるようにすることである。

方法

この質的研究では、著者らは2021年1月31日から2021年6月20日の間に、米国の15の施設と6つの外科専門科の31人の現在の外科研修医とフェローを対象に、医学部時代の外科手術経験について半構造化面接を行った。 左利きの研修医は、手術時の手の優位性に関係なく対象とした。

結果

この研究では、左利きの医学生が外科教育で経験する主な課題として、以下の3つのテーマが浮かび上がりました。

  1. 教員やレジデントからの混乱を招くアドバイス: 左利きの研修生は、医学生時代にレジデントや教員から利き手に関する指導を受けた際、アドバイスが一貫しておらず、混乱を招くことが多かったと述べています。例えば、ある教員は右手で全てを学ぶべきだと言う一方で、他の教員は利き手である左手を使うように指示するなど、相反するアドバイスが頻繁に行われたとのことです。

  2. 右利きへの圧力と左利きに対するスティグマ: 研修生たちは、外科教育の場において右手を使うよう圧力を感じたり、左利きであることが不利に働くと感じたりすることが多かったと報告しています。例えば、右手で操作することが奨励される環境で、左手を使うことに対する否定的な反応や、左利きであることを理由に操作がうまくいかない場合に批判されることがありました。

  3. 左利き医学生の教育的な願望: 左利きの研修生は、自分たちが感じた困難を改善するために、教育において左利きがもっと認知され、適切にサポートされることを望んでいました。例えば、手術室に入る前に利き手を確認されたり、左利き用の器具があることを知らされたりすることを望んでいたとのことです。

考察

研究者たちは、左利きの医学生が外科教育で直面する課題について、いくつかの重要な提言を行っています。

  1. 教育者への意識啓発: 教育者に対して、学生の中には左利きの者が一定数存在し、その学生が直面する特有の問題に対する理解を深めるべきであると提案しています。

  2. 利き手の確認と尊重: 教育者は、学生の利き手を無条件に指示するのではなく、現在の利き手の好みを確認し、それを尊重することが重要です。これにより、学生が利き手について自由に話し合える環境が促進されます。

  3. 左利き学生のサポート体制の整備: 医学部は左利きの学生に対するサポートを強化し、左利き用の器具の提供や、左利きの指導者による指導などの支援を行うべきです。

  4. 教育者の研修: 左利きの研修生を受け入れ、支援するための戦略を教育者に提供するための研修プログラムの導入が推奨されています。

  5. 左利き用の教育リソースの充実: 外科教育における左利き用の具体的な手技のライブラリの作成など、左利きの学生が利用できる教育リソースを充実させる必要があります。

結論

左利きの医学生は、外科教育中にユニークな課題に遭遇する。 これらの学生は、指導者から提供されるアドバイスのばらつきに戸惑い、右利きで手術することがいかにプレッシャーに感じられるかに落胆し、十分な左利きの教育資源がない中で自分で物事を解決する必要性に重荷を感じていると報告している。 外科教育の指導者は、左利きの学習者が直面するユニークな問題を詳しく説明し、学習者の現在の手術手の好みを公平に聞き出し、左利きの学生に責任を持ち、左利きの外科研修生の受け入れと適応戦略を促進し、左利きの外科資料の充実を図るべきである。