医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

FDプログラムの能力開発を理解する:逐次説明的混合法研究

Understanding the capacity development of faculty development programs: a sequential explanatory mixed methods study

Mahla Salajegheh, John Sandars, Azim Mirzazadeh & Roghayeh Gandomkar 

BMC Medical Education volume 24, Article number: 744 (2024) 

bmcmededuc.biomedcentral.com



背景

教員能力開発プログラムは、個人の態度、価値観、スキルを向上させ、組織変革を実施できるようにすることで、個人と組織の両方の能力開発をもたらすことができる。 FDプログラムがどのように能力開発をもたらすのか、またその影響要因を理解するためには、さらなる理解が必要である。 本研究は、あるFDプログラムの参加者がFDプログラムの能力開発の特徴についてどのような認識を持っているのか、またその影響要因について探ることを目的とした。

方法

逐次説明的混合法デザインを用いた。 ファカルティ・ディベロップメントの能力開発に対する教員の見解について調査を行った。 その後、調査結果の理解を深めるために、回答者に対して 22 回のインタビューを実施した。 インタビュー記録は通常の内容分析を行った。

結果

合計203名がアンケートに回答した。 

定量的な結果

回答者の大多数が、教員育成プログラムによる能力開発が高い水準で達成されていると評価しました。特に、「教育手法の発展」では、「学習者に概念やスキルを伝達する能力が向上した」と88.4%の回答者が回答しています。一方で、「医学教育の証拠を教育活動に活用する能力を得た」という項目については77.1%と最も低いスコアを記録しました。また、教員育成プログラムの継続性や教育リーダーシップの発展に対しても高い評価が得られました。

質的な結果

インタビューを通じて、教員の教育手法やプロフェッショナリズムの向上が確認され、これが組織全体の能力開発に寄与していることが明らかになりました。さらに、プログラムの質、特に教育内容や方法、プログラムの管理、フォローアップが、能力開発に重要な役割を果たしていることが示されました。

考察

この研究は、教員育成プログラムが個人と組織の能力開発を促進することを示しており、特にプログラムの質や組織的なサポートが重要であることが強調されています。組織的なサポートには、上司や同僚からの支援が含まれ、これが能力開発プロセスの障害ともなり得る一方で、促進要因ともなり得ることが明らかになりました。例えば、一部の教育管理者が新しい教育手法に対して否定的な態度を示すことが、能力開発プロセスを阻害している一方で、他の管理者が積極的に支援することで能力開発が促進されていることが確認されました。

また、教員の内的な動機づけや教育に対する責任感が、プログラム後に新しい教育手法を採用する意欲を高め、これが能力開発に貢献していることが示されました。このように、教員育成プログラムは、個々の教員の能力開発のみならず、組織全体の教育力の向上にも寄与しており、持続可能な組織的変革を促進するためには、プログラムの質と組織的サポートが不可欠であることが示唆されています 。

促進要因と障壁要因

この研究では、能力開発プロセスに影響を与える要因として、組織的要因、対人関係的要因、および個人的要因の3つが特定されました。

組織的要因:

教育施設の不十分さや、教育活動の昇進への貢献度の低さが障壁として挙げられました。特に、教育よりも研究が優先される傾向や、教育活動への報酬や認識の不足が、能力開発を阻害しているとされています。

対人関係的要因:

教育管理者や同僚からのサポートは、促進要因としても障壁としても作用します。例えば、教育管理者が新しい教育手法に対して否定的な態度を示す場合、それが能力開発を阻害する一方で、積極的なサポートがある場合には能力開発が促進されることが確認されました。同僚からの建設的なフィードバックは、教育活動の改善に大きく貢献しています。

個人的要因:

教員自身の内的な動機や教育への責任感が、能力開発を強化する要因として働いています。プログラム参加後、多くの教員が自分の教育方法を見直し、学生に対するコミュニケーションを改善するための努力を続けています。

結論

本研究では、FDプログラムの文脈における能力開発プロセスの具体的な特徴を明らかにし、個人とより広範な組織システムの両方に変化をもたらすプログラムの重要性を浮き彫りにした。 また、能力開発プロセスを可能にし、制約するいくつかの要因も特定された。 本研究で得られた知見は、今後の能力開発のためのFDプログラムの実施に役立てることができる。