医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学生が学習ツールや教室活動を共同作成できるようにすることで、学習体験を向上させる。

Enhancing the learning experience by empowering medical students to co-create learning tools and classroom activities
Parama Chaipackdee1, Thanakrit Tanjararak1, Parit Prechachaisurat1, Bhranai Sammatat1, Patomthan Marknui1, Chalinee Monsereenusorn2, Chanchai Traivaree2, Wittawat Chantkran3, Pasra Arnutti4, Thammanoon Srisaarn5, Ram Rangsin1, Mathirut Mungthin1, Dusit Staworn5 and Piya Rujkijyanont2

1Phramongkutklao College of Medicine, Bangkok, Thailand

2Division of Hematology-Oncology, Department of Pediatrics, Phramongkutklao College of Medicine, Bangkok, Thailand

3Department of Pathology, Phramongkutklao College of Medicine, Bangkok, Thailand

4Department of Biochemistry, Phramongkutklao College of Medicine, Bangkok, Thailand

5Medical Education Unit, Phramongkutklao College of Medicine, Bangkok, Thailand

Submitted: 12/04/2024; Accepted: 06/10/2024; Published: 17/10/2024

Int J Med Educ. 2024; 15:124-129; doi: 10.5116/ijme.6702.4d43

https://www.ijme.net/archive/15/empowering-medical-students-to-co-create-learning-tools/?ref=linkout

目的

本研究は、医学生が学習ツールや教室での活動を共同作成できるようにすることで、医学生の学習経験を向上させることを目的とした。

方法

新しいカリキュラムの2年目から10名の参加者を募り、横断研究を行った。 多様性に基づいて5人が選ばれ、学習ツールやクラス活動をデザインする権限を与えられた。 学生の満足度は平均点として示された。 授業前後の学習科目における自信の得点の比較は、対応のあるt検定を用いて分析した。 授業前後の多肢選択問題(MCQ)の得点について、2年目(n=96)と前カリキュラムの授業に参加した3年目(n=98)との比較を独立標本t検定を用いて分析した。

カリキュラム設計:

  • ADDIEモデルを使用して設計
  • 造血・リンパ系システムコース内の4つの授業を対象
  • 代表学生が授業の3週間前からオンライン会議で設計に参加
  • 学生の提案で「ゲーム化された反転授業」を採用

学習ツール開発:

  • Jeopardyゲームを採用(無料PowerPointテンプレート使用)
  • 代表学生が授業2週間前に教材を受け取り
  • 1週間前に教員とミーティングを実施
  • 複数タイプの問題(多肢選択、○×、記述式など)を作成
  • 難易度に応じて100-1000点の配点を設定

実施方法:

  • 授業1週間前に全学生に教材を提供
  • 当日は5グループに分かれてゲームを実施
  • 教員はファシリテーターとして参加
  • 最終授業後に優勝チームを発表

結果

満足度と自信:

  • 満足度中央値:90(範囲:10-100)
  • 自信スコア:
    • 授業前:46.4%(SD=20.8)
    • 授業後:82.7%(SD=16.9)
    • 有意な向上を確認(p<.001)

MCQの比較:

  • 授業前の比較:
    • 3年生:53.9%(SD=21.0)
    • 2年生:49.7%(SD=24.8)
    • 3年生が有意に高い(p<.05)
  • 授業後の比較:
    • 2年生:85.6%(SD=19.0)
    • 3年生:77.3%(SD=23.6)
    • 2年生が有意に高い(p<.001)

代表学生の反応:

  • 教員の意図と努力への感謝
  • 質問作成スキルの向上
  • 時間管理の重要性の認識
  • 発表スキルの向上への意欲

考察

主要な findings:

  • 学生中心学習(SCL)の有効性を確認
  • デジタル世代に適したゲーム要素の効果
  • 事前学習と主体的参加の相乗効果
  • 協働学習環境の促進

教育的意義:

  • 学生の内発的動機付けの向上
  • 自尊心とソフトスキルの発達
  • 自己決定力と自律性の育成
  • 生涯学習スキルの促進

学習環境の重要性:

  • 学年レベルに応じた方法の必要性
  • 軍医学校特有の環境への適応
  • デジタル世代の特性への配慮
  • 協働的学習環境の構築

限界と課題:

  • 代表学生の少なさ
  • 特殊な環境(軍医学校)での実施
  • 評価方法の単純さ
  • 一般化可能性の制限

今後の展望:

  • 質的研究の必要性
  • より包括的な評価モデルの開発
  • 他の医学教育機関への適用可能性
  • 長期的な効果の検証

結論

医学生が学習ツールや授業活動を共同作成できるようにすることで、学習経験を積極的に向上させることができる。 本研究の結果は、学習環境に基づき適切に設計された学生中心の学習戦略による学生のエンパワーメントの重要性に言及したものである。 この研究結果の背景にある「なぜ」と「どのように」をよりよく理解するためには、さらなる質的研究が必要である。