医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

地域枠の有無は日本の医学部学生の成績に影響を与えるか?10年間の分析

Does regional quota status affect the performance of undergraduate medical students in Japan? A 10-year analysis
Satoshi Ozeki, Sachiko Kasamo, Hiroyasu Inoue and Seiji Matsumoto

Int J Med Educ. 2022; 13:307-314; doi: 10.5116/ijme.6372.1fce

www.ijme.net

 


目的

本研究は、医学部学生の学業成績に入学形態による差があるかどうかを明らかにし、入試がどの程度成績を予測するかを検討することを目的とする。

方法

本研究は、旭川医科大学の既存データを活用した観察研究である。参加者は2010年から2019年の間に入学した医学生1057名である。入学タイプ間の差異を明らかにするために、分散分析およびTukeyの検定を利用した。重回帰は、各タイプの累積評定平均値の予測因子を探索した。

結果

分散分析により、センター試験(F(3, 1053) =70.78, p <0.001)と累積成績平均(F(3, 1053) =3.93, p <0.01)で有意差が見られた。Tukeyのポストホック検定により、2種類の一般入学者(M=83.52, SD=3.22; M=85.57, SD=3.01)は2種類の地域枠学生(M=81.61, SD=3.93; M=80.65, SD=3.61)よりセンター試験で著しく高いことが判明した。地域枠グループの累積評定平均値(M=2.23、SD=0.34)は、2種類の一般入試(M=2.11、SD=0.36、M=2.12、SD=0.34)より、有意に高かった。各入試の累積成績平均値の予測には,高校の成績平均値と女性が有意であった(16.0-28.3%の分散).

結論

地域枠の学生は,センター試験の得点が有意に低いにもかかわらず,また、大学独自の科目入試を必要としないにもかかわらず、一般入学者と同等の学業成績を収めていることが確認された。特に、大学独自の科目入試の結果は、累積GPAの予測にほとんど寄与していない。

地方に十分な数の医師を供給することは、世界的に長年の未解決の課題である。したがって、地域枠入学は、医学部で学問的成功を収めることができる将来の地方医師を効果的に選抜し確保するための有望な戦略となり得るだろう。本研究は、農村部の医療従事者を拡大するために同様の入試を検討している医学部にとって貴重な知見を提供するものである。今後、入学希望者の成功を予測するための追加的な要因を検討し、GPAとは別に医学生の様々な学習成果を評価するための研究が必要である。さらに、今後の研究では、地域枠入試で入学した医学生が地方で働きたいと思う動機を明らかにする必要がある。また、地方医療に十分貢献できる医師を育成するために、医学部のカリキュラムに対する彼らの意見も調査する必要がある。これにより、地域枠医学生の具体的なニーズに対応した医療カリキュラムを作成することが可能となる。