医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術のマルチモーダルトレーニングにおけるシリアスゲームとバーチャルリアリティ:無作為クロスオーバー試験

Serious gaming and virtual reality in the multimodal training of laparoscopic inguinal hernia repair: a randomized crossover study
Franziska Lang, E. Willuth, C. M. Haney, E. A. Felinska, E. Wennberg, K. F. Kowalewski, M. W. Schmidt, M. Wagner, B. P. Müller-Stich & F. Nickel 
Surgical Endoscopy (2022)

 

link.springer.com

 

背景
本研究の目的は、シリアスゲーム「Touch Surgery™」(TS)とバーチャルリアリティVR)トレーナー「Lap Mentor™」の間で腹腔鏡下ヘルニアモジュールの手術スキルの伝達性を評価することであった。さらに、本研究は、TS上の腹腔鏡下鼠径ヘルニアモジュールを用いて、妥当性の根拠を収集し、その知見の「妥当性の根拠となる情報源」について議論することを目的とした。

*Touch surgery™

モジュール「腹腔鏡下鼡径ヘルニア修復術」は、フェーズ1:準備(26問のMC)とフェーズ2:ポート設置およびヘルニア修復(40問のMC)の2段階に分かれています。

Fig. 2

TouchSurgery™ 腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復モジュールのアプリケーションにおけるフェーズ2の学習モード

 

*Lap Mentor III

figure 3

バーチャルリアリティトレーナー上のタスク1の鼠径ヘルニアモジュールの教育用画像

 

研究方法
無作為化クロスオーバー試験において,臨床年次の医学生(n=40)がTSとVRトレーナーで腹腔鏡下鼠径ヘルニアモジュールを実施した。TS群はTS上の「腹腔鏡下鼠径ヘルニアモジュール」(第1段階:準備、第2段階:ポートプレースメントとヘルニア修復)から開始し、まずトレーニングで、次にテストモードで習熟するまでモジュールを実施した。VRグループは、VRトレーナーの「Inguinal Hernia Module」(タスク1:Anatomy Identification、タスク2:Incision and Dissection)から開始し、習熟するまでモジュールを実行した。最初のモダリティで習熟した後、もう一方のトレーニングモダリティを習熟するまで実施した。主要評価項目は、各課題・段階について、各グループが習熟するまでに要した試行回数とした。

結果
課題1の習熟に必要な試行回数は,TSから始めた学生はVRトレーナーから始めた学生よりも有意に少なかった(TS = 2.7 ± 0.6 vs. VR = 3.2 ± 0.7; p = 0.028)。課題2については、群間で有意差は認められなかった(TS = 2.3 ± 1.1 vs. VR = 2.1 ± 0.8; p = 0.524)。TS上の両フェーズにおいて、VRトレーナーからTSへの有意なスキル伝達は観察されなかった。TSに関するモジュールの妥当性エビデンスの側面が収集された。

結論
TSは、タスク1(解剖学的同定)のVRトレーナーでの成績向上という形でさらなる利益をもたらしたが、タスク2(切開と解剖)についてはそうではなかった。これは、TSが理論的なトレーニングのみを提供し、VRトレーナーのタスク1では解剖学的知識をテストし、タスク2では実技をテストするという事実によって説明することができる。VRトレーナーからTSへのスキルトランスファーを示すことはできなかった。これは、VRトレーナーモジュールが主に実技を教えるものであったためと考えられる。また、VRトレーナーは腹膜の準備のみを教え(メッシュの配置は研究中であった)、患者の準備は教えなかった。本研究では、シリアスゲームTS上の「腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術」モジュールの内容や他の変数との関係性に関するエビデンスについて、構成要素の妥当性を示すいくつかのエビデンスが示された。したがって、VRとTSはマルチモーダルトレーニングにおいて組み合わせて使用されるべきであり、最適なトレーニングを確保するためにTSを最初に使用することが理想的である。