医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

異職種間実習病棟での教育後の医学部最終学年学生のEPAの評価 症例対照研究

Assessment of final-year medical students’ entrustable professional activities after education on an interprofessional training ward: A case-control study

Julian Brätz, Lisa Bußenius, Irina Brätz, Hanno Grahn, Sarah Prediger & Sigrid Harendza 
Perspectives on Medical Education (2022)

 

link.springer.com

 

はじめに
インタープロフェショナル・トレーニング病棟(ITW)は、医学生に全人的で本格的な医療体験を提供し、臨床能力を向上させることを目的として実施されている。ITWでのトレーニング後の学生のコンピテンシーを評価する対照的なアウトカム研究は、あまり見られない。

2020年、当医療センターに医学生と看護研修生のインタープロフェショナル教育のためのITWが開設された。この病棟では,医学部最終学年生と看護研修生が内科系患者の包括的な患者ケアを行い,両職種のファシリテーターが指導に当たっている.ITWの学習目標には、「責任感」、「チームワークと仲間意識」、「上司との口頭でのコミュニケーション」などの基本的な医療能力が不可欠であった。しかし、病歴聴取の際の患者とのコミュニケーションは、医学部最終学年においてすべての学生に求められるスキルであるため、患者の病歴聴取に関するコミュニケーションおよび対人関係スキルは、ITWカリキュラムの特定の学習目標に含まれていない。

この症例対照研究の目的は、研修医初日の遠隔医療シミュレーションにおいて、模擬患者および上級医による前向きEPAによって、医学部最終学年ITW学生対対照学生のコミュニケーションおよび対人スキルを評価することであった。

我々の仮説は以下の通りである。1)最終学年では、病歴聴取時の患者とのコミュニケーションは特に学習目標になっていないため、模擬患者とのコミュニケーションは全員同等である。2)ITWカリキュラムの学習目標に基礎能力があるため、基礎能力に基づいて行われるEPAではITW学生の方が任用得点が高くなる。

 

 

調査方法
2021年3月、4週間のITWでの実習経験がある16名(ITW群)とない16名(対照群)の最終学年学生32名が、研修医の初日を模擬した研修に参加した。模擬患者は、毎回の診察後にComCare指標を用いて学生の病歴聴取のためのコミュニケーション能力と対人関係能力を評価した。12名のEPA候補者は、学生の症例発表のビデオを見た後、3名の上級医によって評価された。

*ComCare指標
学生のITW参加状況を伏せた模擬患者は、毎回の面接後に学生のコミュニケーション能力および対人関係能力を評価した。これは、コミュニケーションに関する3項目(「言語」、「ニーズ」、「次のステップ」)と対人能力に関する4項目(「傾聴」、「関心」、「思いやり」、「雰囲気」)からなり、さらに8番目の項目は、相談内容全般の満足度を評価するものである。すべての項目は、1:全く同意しない、から5:完全に同意する、の5段階のリッカート尺度で評価される。

 

結果
ベースライン特性およびComCare indexの評価には両群間で有意差はなかったが、12名のEPAの全体平均委託レベルは、対照群と比較してITW群で有意に高かった(p < 0.001)(median = 3.15 vs 2.22).また、すべてのEPAの評価者間信頼性は高く、12項目のEPAのうち10項目でITW群の学生への委託が有意に高かった。

 

考察
ITWトレーニングは、将来的な委託の判断に関連し、上級医が症例発表から推測することができる能力を実践するために、医学生を十分に準備することができるようである。また、ITWトレーニング後の学生の能力を評価するために、観察可能なEPAを定義することも可能であろう。

 

結論

私たちの研究でITWの訓練を受けた最終学年の医学生は、ITWの訓練を受けていない対照群と比較して、模擬患者との面接において同様のコミュニケーション能力および対人能力を示した。また、模擬患者引継ぎの評価者の観察に基づくEPA候補者の評価では、ITWの学生が有意に高い委託スコアを得た。この委託の差は、専門職間教育の一環としてITWで学習する基本的な医療能力と関連しているという我々の仮説を検証するために、それぞれの能力またはこれらの能力を含むコアEPAの評価は、直接職場またはシミュレーションベースの観察によって実施することができる。