医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

臨床のための基礎医学知識の保持

Basic Medical Sciences Knowledge Retention for Clinical Practice

Bahiru Tenaw Goshu 

Department of Anatomy, School of Medicine, University of Gondar, Gondar, Ethiopia

Published 9 May 2022 Volume 2022:13 Pages 475—482

DOI https://doi.org/10.2147/AMEP.S364631

 

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背景

臨床科学の勉強の基本は、基礎医学的な事実を思い出し、理解することである。しかし、臨床情報を直接的に変えることはできず、臨床実習において医学生の基礎科学知識の保持にギャップがあることが研究で明らかにされている。本研究の目的は、医学生の医学基礎知識の定着度と、臨床実習における医学基礎知識の関連性を評価することである。

方法

2021年4月から5月にかけて、ゴンダール大学で施設ベースの記述的横断疫学研究デザインを実施した。データ収集には、合計15の基礎的・臨床的な質問セットを使用した。データの入力と分析にはSPSSバージョン20を使用した。

結果

合計 191 名の医学生が参加し、回答率は 100%であった。このうち、48.6%が男性であった。参加学生のうち、69名(36.1%)が評定平均値4.0満点中3.6以上の優秀な学業成績であった。基礎系と臨床系の全問正解者は、2年生が8.6±2.7と5±2.8、4年生が5.5±2.3と7.1±1.2、5年生が6.5±1.4と6.7±1.0、6年生が5.3±0.8と8.4±2.5で、それぞれ5年生、6年生が7.5±2.0、8年生が7.5±2.0であった。代表年次である2年生の成績は,基礎科学(6.49±2.5, F=12.51, P≦0.001)および臨床科学(4.0±1.9, F=14.73, P≦0.001 )の総合影響と統計的に有意であった.

今回の研究成果により、臨床科学の実践は、その基礎となる基礎科学が完全に把握されているにもかかわらず、非伝統的であることが多いことが明らかになった。また、臨床系の学生は、臨床系の問題で高い得点を獲得しているが、基礎系の問題ではあまり良い成績をとっていないことが明らかになった。

臨床的な事実は、必ずしも対応する基礎的なデータと一緒に想起されるわけではなく、独立して想起される。臨床系の学生が基礎的な情報をあまり覚えていないのは、臨床系の教科書に基礎的なことが詳しく書かれていないことや、基礎的なことに触れる機会が少なく、徐々に記憶力が低下していることが原因かもしれない。

逆に、臨床系学生は、学ばなければならない科学的データが数多くあり、時間が経つにつれて基本的な概念の把握ができなくなっているように見える。

中等教育後の情報保持の決定要因として、その後の履修(強化)、初期の「能動的」学習が認識されている。初期学習は確かに長期的な定着には不十分であるが、記憶に基づく知識の分散・成長・精緻化リハーサルといった要素には重要である。内容は認識され、表現される必要はない。データの損失は、事実上のコンテンツの不足だけに起因するのではなく、むしろ、それぞれの初期学習と間隔を置いた使用法が記憶にとって重要であるように、プログラムが時間をかけてデータを増やすことができないことと関連づけるべきである

 

結論

基礎科学の知識と臨床科学の準備を連携させることで,学生が疾病の診断と治療の概念を統合的に把握できるようにすることが提案された。