医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

内科研修医による重症患者との会話へのアプローチの視点

Perspectives of internal medicine residents on approaching serious illness conversations
Andrew J. Lawton, Alla Eldam, James A. Tulsky, Subha Ramani
First published: 29 May 2022 https://doi.org/10.1111/tct.13508

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/tct.13508?af=R

 

背景

重篤な疾患に関する会話は、あらゆる分野の臨床研修生にとって重要な能力であるが、多くの研修生はそのような会話に参加するための準備が不十分であると感じている。本研究では、研修医(若手医師)が重篤な疾患に関する会話に取り組む際に経験する課題や感情について調査し、彼らの認識が効果的なコミュニケーションスキルカリキュラムの開発にどのように役立つ可能性があるのかを検討した。

 

研究方法

定性的方法論を用いて、2020年1月から5月の間にBrigham and Women's Hospitalで開催されたコミュニケーションスキルワークショップに参加した内科研修医の事前経験について調査した。自由形式の質問票を用いて、重篤な病気の会話の実施に関する参加者の考察を募った。語り口は非特定化され、重要なテーマについて分析された。Mass General Brigham の Institutional Review Board は本研究を承認した。

 

調査結果

対象研修医70名中51名(72.8%)がアンケートに回答した。質的な分析により、5つの主要テーマが特定された。(a)正しく行う時間を見つける、(b)間違った言葉を使うことへの恐れ、(c)患者の反応と感情の管理、(d)どれだけ言っていいかわからない、(e)意味と充足感を見つける、であった。また、研修医は、コミュニケーショントレーニングを強化するためのいくつかの実践的な戦略を提案した。

研修医が提案した、深刻な病気に関する会話への備えを向上させるための戦略。

考察と結論

重症患者との会話はストレスの多いものであると報告されているが、研究参加者は、その経験によって有意義な治療関係を築くことができ、充実感につながったことを強調している。研修医が推奨する戦略は、シミュレーションやリアルタイムのスキル練習を増やすなど、コミュニケーショントレーニングを改善するための貴重な洞察を与えてくれる。研修医と教員が共同でカリキュラムを作成することで、研修生の課題を解決し、必要なスキルを促進し、専門家としてのアイデンティティを形成することができる可能性がある。

この研究は、私たちのカリキュラムの将来の反復に影響を与えるものです。次のステップとしては、研修医が教員と協力して既存のカリキュラムを改訂すること(コクリエーション)が考えられます。また、今後の研究では、今回紹介した研修医の視点や、共創型カリキュラムが研修医のスキル、自信、充実感などに与える影響をより深く探るために、インタビュー調査を行う必要があります。最後に、共創型カリキュラム実施後の研修医主導の会話に対する患者・家族の満足度を調査することも重要であろう。

臨床研修医は、重篤な疾患に関する会話をリードする際に様々な課題や困難な感情に直面する一方で、豊かな治療的関係を構築し患者の最善の利益を擁護する機会を得ることによって、これらの議論に深い意味を見出すようである。研修生の視点や提言を取り入れ、カリキュラムを共同作成することで、教育者は研修生の課題に対応し、必要なコミュニケーションスキルを教え、専門家としてのアイデンティティを育むことができるかもしれない。