医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

手術室初心者の手術器具セットアップに関する知識とパフォーマンスに対するシリアスゲームと講義による仮想トレーニングの効果の比較:多施設共同2群間比較研究

Comparison of the effects of virtual training by serious game and lecture on operating room novices’ knowledge and performance about surgical instruments setup: a multi-center, two-arm study

Fakhridokht Akbari, Morteza Nasiri, Neda Rashidi, Sahar Zonoori, Leila Amirmohseni, Jamshid Eslami, Camellia Torabizadeh, Fahimeh Sadat Havaeji, Marzieh Beigom Bigdeli Shamloo, Crislaine Pires Padilha Paim, Mehran Naghibeiranvand & Masoomeh Asadi 
BMC Medical Education volume 22, Article number: 268 (2022) 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景
ゲームを用いたトレーニングは、学生が体験的に学ぶことができ、個人の進歩や能力に応じてトレーニングを柔軟に調整できることから、様々な看護分野で導入が進んでいる。本研究では、ゲーム「手術器具で遊ぼう(PlaSurIn)」と講義によるバーチャルトレーニングが、手術室(OR)初心者の手術器具のセットアップに関する知識とパフォーマンスに与える効果を比較することを目的とした。

*PlaSurIn

右側に「バーチャルモード」,「学習モード」,「評価モード」の3つの主要なオプションを含む「メインメニュー」を備えている.「バーチャルモード」では、デザインされたテーブルの中にある35種類のインスツルメントの設定、6種類のインスツルメントの分類(レトラクター、ヘモスタット、その他、グラッパー、カッター&ディスセプター、ニードルホルダー)、インスツルメントをクリックするとそれぞれのインスツルメントの情報と画像を見ることができます。学習モード」では、学習者は「バーチャルモード」に従って設計されたテーブル上に何度でもインスツルメントをセットし、必要に応じてヒントを求めることができる。アセスメントモード」では、「ラーニングモード」で設定した機器を7分間で再現する。また、「アセスメントモード」終了時には、取得したスコアとセットアップ完了までの残り時間を確認することができます。さらに、「アセスメントモード」の終了時に、分類されたすべての機器を設計されたテーブルの正しい位置に配置できた場合には、ボーナスを受け取ることができます。訓練生は,各試行で器具の正しい位置に関して適切なレベル70%に達する必要があり,そうでなければ,パフォーマンスを向上させたいときにゲームを繰り返す必要がある.

f:id:medical-educator:20220415062242p:plain

 

f:id:medical-educator:20220415062255p:plain

f:id:medical-educator:20220415062322p:plain

研究方法

本研究は、S学期のOR技術系学部生51名を対象に、"An Introduction to Surgical Instruments and Equipment "の講義を実施した。さらに、学習管理システムを通じて、2つの異なる方法を用いた仮想トレーニングセッションを実施した。ゲームトレーニング群(GTG,n=27)には,1週間にわたり「PlaSurIn」ゲームを用いた個人トレーニングを行い,レクチャートレーニング群(LTG,n=24)には,1週間にわたり講義形式のトレーニングを行った.知識の測定には、トレーニングの前と直後に10問の多肢選択式の理論テストを全員が参加した。また、研修後にOSCE(Objective Structured Clinical Examination)に参加し、セットアップ完了までの残存時間、得点、エラー、ボーナスで成績を評価した。

結果
理論試験の平均点は、トレーニング後、LTGよりもGTGの方が有意に高かった(p=0.040)。さらに、GTG参加者はLTG参加者に比べ、高得点(p = 0.016)、低エラー(p = 0.001)、高ボーナス(p = 0.011)であった。また、設定完了までの残り時間も、GTGの方がLTGより有意に長かった(p < 0.001)。

 

まとめ

本研究の結果から、OR技術科2年生が手術器具のセットアップに関する必要な知識と能力を得るために、従来のトレーニング方法の代替または補完として「PlaSurIn」ゲームを使用できる可能性があると思われる。PlaSurIn」ゲームは無料で,使いやすいプラットフォームであることから,特にCOVID-19のロックダウン期間を含む通常のトレーニング方法を利用できない場合,教育資源を削減し,限られた時間でOR初心者の手術器具のセットアップに関する知識と能力を高めるために,今後のトレーニングプログラムで使用することが可能であると考えられる.さらに、「PlaSurIn」ゲームは、周術期トレーナーが勤務時間の制限や学生数の多さによってプレッシャーを受けている場合にも実用的である。
ゲーム「PlaSurIn」によるトレーニングは、講義による方法と比較して、OR初心者の手術器具のセットアップの知識とパフォーマンスの向上に効果的であることがわかった。このことから,PlaSurInゲームは手術器具のセットアップに関するOR初心者の能力開発に貢献することができると考えられる.しかし,この分野では,より大きなサンプルサイズを用いたさらなる長期的な研究が推奨される.