医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学研修生が実演の困難に遭遇したとき:瞳孔の反応からの証拠

When medical trainees encountering a performance difficulty: evidence from pupillary responses

Xin Liu, Yerly Paola Sanchez Perdomo, Bin Zheng, Xiaoqin Duan, Zhongshi Zhang & Dezheng Zhang 
BMC Medical Education volume 22, Article number: 191 (2022)

 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景

医療研修生は、スキルアップのために多くの手順を指示通りに学ぶことが求められる。本研究は、技能学習中にmoment of performance difficulty (MPD) に遭遇したときの研修生の瞳孔反応を調べることを目的とする。MPDの検出は、教育者が訓練生を支援するために必要不可欠である。

 

簡単な課題と難しい課題では瞳孔の反応が異なる可能性があるため、課題の難易度によって瞳孔の変化を調整する予定である。具体的には、以下のような仮説を立てた。

1.
MPDに遭遇したとき、被験者は課題の難易度が上がったと認識し、瞳孔の大きさが増加する。被験者が指示を確認しながら助けを求めると、精神的ストレスから解放され、瞳孔の大きさが減少する。
2.
2. パフォーマンスの各段階における瞳孔の変化は、タスクの難易度に影響される。具体的には、難易度の高い課題を遂行するとき、簡単な課題を遂行するときよりも瞳孔の大きさが大きくなる。

 

研究方法

シミュレーションモデルで胸腔鏡下手術の練習をしながら、眼球運動を記録した。瞳孔のデータを訓練生間で比較できるようにするため、各訓練生の手技全体における瞳孔の拡張を正規化した調整瞳孔サイズ(APS)を提案した。また、APSを3つの異なるパフォーマンス状況、正常なパフォーマンスの瞬間(MNP)、MPD、助けを求める瞬間(MSH)の間で比較した。

https://media.springernature.com/full/springer-static/image/art%3A10.1186%2Fs12909-022-03256-3/MediaObjects/12909_2022_3256_Fig1_HTML.png?as=webp

 

結果

混合型分散分析の結果、最大瞳孔径、最小瞳孔径、平均瞳孔径、中央瞳孔径などの調整瞳孔径の変数は、パフォーマンス状況によって有意差があることが判明した。MPDとMNPに比べ、MSHでは瞳孔の大きさが小さくなった。難易度の高いサブタスクでは、容易なサブタスクと比較して、APSの累積頻度が小さくなった。

 

結論

このプロジェクトの結果は、瞳孔の反応が良い行動指標になり得ることを示唆している。本研究は、拡張現実感技術を利用して、医学研修生の演技の難易度を自動検出し、指導メッセージを配信する人工知能システムの構築を目指している研究の一環である。