医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

チームベースの学習が臨床推論に与える効果の違い

Differential effects of team-based learning on clinical reasoning
Kim Yao Ong, Cherie W. Q. Ng, Nigel C. K. Tan, Kevin Tan
First published: 08 November 2021 https://doi.org/10.1111/tct.13436

 

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/tct.13436

 

背景

臨床推論(Clinical Reasoning: CR)は、患者ケアのために情報、知識、文脈的要因を統合する能力である。本研究では、チームベースの学習(TBL)が神経学的なCRに与える影響を調査した。本研究では,神経解剖学的局在(NL)と神経学的救急(NE)のCRを教育するための簡易TBL(sTBL)と対話型講義(IL)を比較し,有効なスクリプトコンコーダンス・テスト(SCT)を用いて評価した.

 

方法

シンガポールのYong Loo Lin School of Medicineの学部3年生と5年生を対象に、無作為に2つのグループに分けてクロスオーバー試験を行った。グループ1はsTBLを用いたNEとILを用いたNL、グループ2はsTBLを用いたNLとILを用いたNEを教えた。ティーチングは3時間かけて順次行われ、その後すぐにSCTが行われた。主要評価項目は、NEとNLをsTBLで教えた場合と、ILで教えた場合のSCTスコアの平均値の差であった。

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調査結果

179名の学生(グループ1、n=81、グループ2、n=98)が参加した。sTBLで教えた学生のNLのSCTスコアの平均値は、ILに比べて有意に高かった(64.8%対61.7%、平均差3.1%、95%信頼区間[CI]0.6%-5.5%、p=0.013)、効果量は0.38であった。NEのSCTスコアの平均値は、sTBLで教えた学生とILで教えた学生の間で同様であった(66.6%対67.0%、平均差-0.4%、95%信頼区間-2.2~3.1%、p=0.75)。

 

結論

sTBLはILに比べてNLを教えるのに優れていたが,NEを教えるのには両手法は同等であった。

TBLの効果が異なるのは、NLとNEのCRプロセスの違いから生じたものと考えられる。TBLは管理推論よりも診断推論の教育に適しているかもしれません。

TBLはNLの教育においてはILよりも優れていたが、神経系救急の教育においてはTBLとILは同等の結果であった。TBLは,問題表現,仮説生成,病名の選択などの発達によりCRを向上させる可能性があり,診断的推論を伴うより複雑な神経学的トピックの教育に適していると考えられる。しかし、TBLの認知心理学的な基盤を理解するためには、さらなる研究が必要である。診断推論や管理推論をよりよく評価するためのCR評価ツールを開発すべきである。また、教育方法とテーマの関係、およびCRスキルへの影響についての研究が進めば、教育者が最適な医学教育のための教育方法や評価方法を選択するのに役立つと思われる。