医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

日本の医学部1年生が病院の非医療スタッフと接することで、専門家としてのアイデンティティを形成する際の重要な変化をテキストマイニングで検出する

The use of text mining to detect key shifts in Japanese first-year medical student professional identity formation through early exposure to non-healthcare hospital staff

Yayoi Shikama, Yasuko Chiba, Megumi Yasuda, Maham Stanyon & Koji Otani
BMC Medical Education volume 21, Article number: 389 (2021)

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

背景

プロフェッショナル・アイデンティティの形成は、ロールモデルとの相互作用による社会化によって育まれ、初期臨床曝露(ECE:early clinical exposure)プログラムによってサポートされる。非医療従事者は、病院コミュニティの一部を形成しているが、医療文化の外部に位置しており、ロールモデルとしての可能性は未知数である。本研究では、学生の振り返り課題のテキストマイニングを行い、ECE中の非医療従事者との社会化の影響を調べました。

 

調査方法

ECEのコースと課題

半日のオリエンテーションの後、学生は1日かけて病院の主要部門を見学し、1日かけて病棟スタッフをシャドーイングします。今回は、医療従事者(医師、看護師、薬剤師、医療に関わる職種)と接する臨床系4科、非臨床系5科と、医療従事者以外と接する4科(カルテ、医薬品供給センター、ボイラー室、中央メンテナンス室)を体験しました。学生は病院見学中にすべての部署を体験しましたが、シャドーイングのために1つの臨床部門が割り当てられました。学生は12人のグループで実習を行いましたが、実習を行う順番は様々でした。すべての部署のスタッフは、自分の仕事の目的や日常業務について説明を求められました。

実習中、学生は半構造化された一連の反省課題を行い、後に学生のコース内評価の一部として教員が採点しました。最初の課題は、オリエンテーションの後、700床の病院(私たちの大学病院の規模)を運営するために必要な職業をリストアップし、病院で働く専門家の主な特徴を2つの文章(合計3行)にまとめるというものでした。そして、病院での体験の後、病棟でのシャドーイングの後にも、このまとめを繰り返してもらいました。最後に、実習の後、学生は自分の経験について18行以内の文章で反省文を書くように求められました。2017年7月から2018年7月の間に、合計259人の学生から主要特性の要約とリフレクションを収集しました。

福島県立医科大学の医学部1年生259名の課題を対象に、階層的クラスター分析を行いました。最も頻繁に出現する単語の相互関係を分析してコーディングルールを作成し、それを適用して基本的なテーマを明らかにした。

 

結果

専門家としての特徴を表す用語が、「知識・技能」から「(自分の仕事に対する)誇り」や「責任感」へと変化していることがわかった。テーマは、「非医療従事者の貢献」、「職業の多様性」、「誇り」、「責任」、「チームワーク」、「患者ケア」、「感謝」の7つであった。「非医療従事者の貢献」を挙げた学生は、利他的な献身と強い目的意識を語っています。また、「医療従事者以外の人の貢献」を挙げた学生は、医師の立場から、医療従事者以外の人が臨床を支えてくれていることに感謝していることがわかりました。

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結論

非医療従事者との社会化は、病院の労働環境や文化的な労働規範についての重要な洞察をもたらします。非医療従事者は、利他主義と責任感のロールモデルを通して、学生の職業的アイデンティティ形成にポジティブな影響を与え、医師としての自己認識を促進した。