医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

眼瞼裂傷修復のためのマネキンベースの手術シミュレータの評価と導入

Evaluation and implementation of a mannequin-based surgical simulator for margin-involving eyelid laceration repair – a pilot study

Jiawei Zhao, Meleha Ahmad, Emily W. Gower, Roxana Fu, Fasika A. Woreta & Shannath L. Merbs
BMC Medical Education volume 21, Article number: 170 (2021)

 

bmcmededuc.biomedcentral.com

 

どんな研究

眼瞼裂傷修復術を指導するための手術シミュレータを開発し、研修生の手術技術の向上に有用であることを示した研究

 

先行研究など

眼科領域では,手技のトレーニングと評価を行うことができるシミュレーションベースのモデルが増えてきている。

眼瞼裂傷の修復は、実際の患者を担当する前にシミュレーションベースで練習して習熟しておくべき手技のトップ10の1つ

献体は入手が難しく、外科用の縫合セットはいまひとつ、動物は人間とは構造が違う。

 

手法・理論のキモ

Human Eyelid Analog Device for Surgical Training and skills Reinforcement in Trichiasis:マネキンベースのトレーニングシステムは,以前にトラコーマ性睫毛乱生症の手術トレーニング用に開。シリコン製で,取り外し可能な眼窩を持ち,その上に使い捨ての眼瞼カートリッジが装着されている。まぶたのカートリッジの4つの層は,皮膚,筋肉(灰色の線),霰粒腫,結膜というまぶたの主要な層を模している。

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有効性の確認

研修医の手技の熟練度の評価(盲検下ビデオレビュー)

研修医の使用のよさ、有用性の確認

 

議論

献体ベースに比べて、費用はやすい

初学者の方が効果がある

 

次のステップ

時間の関係で繰り返しできないことが示唆されている

単一施設の検証のため、今後他施設で検証予定

 

概要
背景

眼瞼裂傷の修復は、眼科初期研修医にとっての課題であるが、この技術を学ぶための市販のシミュレーションモデルは存在しない。本研究の目的は、もともと睫毛乱生症手術のトレーニング用に開発されたマネキンベースの手術シミュレータを、瞼縁裂傷の修復を学ぶために改良し、研修医のウェットラボ環境下でその成果を評価することである。

 

方法

我々は、以前に開発された睫毛乱生症手術用のマネキンベースのトレーニングシステムを、眼瞼裂傷修復用のシミュレータに改良した。2019年9月から2020年3月の間に、3次医療の学術機関に所属する6人の眼科研修医が、手術シミュレータを使用して、少なくとも1回のマージン巻き込み式眼瞼裂傷修復のシミュレーションを行った。各セッションはビデオ録画された。2人の眼形成外科医が盲検下でビデオをレビューし、標準化されたグレーディングシステムを用いて手術の熟練度を評価した。参加者には、シミュレーション終了前と終了後に、眼瞼裂傷修復の快適さのレベルについて調査した。また、過去の方法や経験と比較して、手術シミュレーターの有用性についても質問した。

 

結果

6人の研修医が11回のシミュレーション手術を完了した。1回以上のセッションを完了した3名の研修医については、2~3回のシミュレーションセッションの間に、スキル評価スコアのわずかな上昇と手術時間の短縮が認められた。自己申告によるマージンを伴う眼瞼裂傷の修復の快適さは、シミュレーション前に比べてシミュレーション後に有意に高かった(p = 0.02)。研修医は、我々の手術シミュレータの有用性を、フルーツピール、手術用スキルボード、手袋、豚足などの過去の方法よりも高く評価したが(p = 0.03)、手術室での経験よりも低かった(p = 0.02)。研修医は、手術シミュレータは、死体頭部や救急部・診察室での経験と同様に有用であると認識していた。

 

結論

我々は、眼瞼裂傷修復術を指導するための手術シミュレータを開発し、研修生の手術技術の向上に有用であることを示した。我々の手術シミュレータは、キャダバーヘッドと同等の有用性があると評価されたが、より容易に入手でき、費用対効果も高い。