医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

医学部の望ましい教授法:国際的多施設研究

Preferred teaching styles of medical faculty: an international multi-center study

Nihar Ranjan Dash, Salman Yousuf Guraya, Mohammad Tahseen Al Bataineh, Mohamed Elhassan Abdalla, Muhamad Saiful Bahri Yusoff, Mona Faisal Al-Qahtani, Walther N. K. A. van Mook, Muhammad Saeed Shafi, Hamdi Hameed Almaramhy & Wail Nuri Osman Mukhtar
BMC Medical Education volume 20, Article number: 480 (2020)

 

bmcmededuc.biomedcentral.com


抄録

背景

現在の教育改革の波の中で、医学部教員の指導スタイルを理解することは、効果的な教育を行うための教育戦略の修正に役立つ。

教授スタイルのインベントリーのモデルは文献にいくつか記載されている。その中でも、Leungらによるインベントリは、4つの異なる指導行動、すなわち、アサーティブ、示唆的、協調的、促進的な指導行動を含んでいる。

またGrashaのモデルには5つの古典的な教授スタイルが含まれています

i. Expert:教師は学生に正しい情報を与えることで知識があり、主題の専門家である

ii. Formal authority:教師は学生を指導する際に許容可能で厳格なルールを強調するマネージャーの役割を果たしている

iii. Demonstrator:教師はロールモデルのような役割を果たし、教師の見解では効果的だと思われる一つのアプローチを学生に使うように促す

iv. Facilitator:教師は質問をしたり、選択肢を探ったり、代替案を提案したり、情報に基づいた選択をするための基準を作るように学生を指導する

v. Delegator:教師は学生の自主性に関心を持ち、学生が自主的に活動することを期待し、要求があれば手助けをする。Delegatorスタイルでは、個々の教育スタイルと学習スタイルが統合され、教師と学習者の教育の質がどのように学習経験を向上させることができるかを判断するのに役立つ

これまでの研究では、医学部教員の特徴的な教授スタイルを調査したものはほとんどなかった。本研究では、アラブ首長国連邦、オランダ、サウジアラビア、マレーシア、パキスタンスーダンの7つの医学部の教員の指導スタイルを比較した。

 

研究方法

データ収集には、Grasha-Riechmann teaching style inventoryをオンラインで実施し、統計解析にはSPSSバージョン20.0を使用した。

 

結果

招待者 460 名のうち、248 名が回答した(回答率 54%)。Delegator指導スタイルが最も多い。

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a:expert b: authority c:demonstrator . d: facilitator. e:delegator

Expert指導スタイルとauthority指導スタイルの間には、有意な相関があった。同様に、Authority指導スタイルとカリキュラムの性質の間には、有意な相関が認められた。Authority指導スタイルと男性の性別のみが有意な相関を示した。興味深いことに、117 名(47%)の教員が、学習成果に厳密に従った授業内容を提供するという教育理念に反対していた。また、女性教員(114/248)は、コースで何をどのように教えるかについて学生と交渉することに積極的であるのに対し、男性教員は学生に学習目標を設定させることで自律性を認める傾向があることがわかった。

 

結論

この国際的な多施設共同研究は、6カ国7機関の医学部教員の好ましい教授法を比較した初めての研究である。その結果、ほとんどの参加者がDeligator指導スタイルを好んでいた。その結果、少人数グループ指導、自己指導型学習、ロール・モデリング、教師のファシリテート的役割などを取り入れた指導スタイルが一致していることが報告された。また、文化、教育、性別、経験、医療カリキュラムの種類などが、コースの内容に厳密に従うなどの多様な指導スタイルに影響を与えている可能性が示唆された。医学教育者は、この貴重なデータを用いて、医学生の多様なニーズに対応するための教育スタイルを調整することができる。