医学教育つれづれ

医学教育に関する論文のPOINTを書き出した備忘録的なブログです。

診断エラーを減らすためのチェックリスト

Checklists to Reduce Diagnostic Errors
Ely, John W., MD; Graber, Mark L., MD; Croskerry, Pat, MD, PhD

Academic Medicine: March 2011 - Volume 86 - Issue 3 - p 307-313
doi: 10.1097/ACM.0b013e31820824cd

https://journals.lww.com/academicmedicine/fulltext/2011/03000/Checklists_to_Reduce_Diagnostic_Errors.17.aspx

 

診断ミスは一般的であり、多くの場合、医師の認知バイアスヒューリスティックの失敗(精神的なショートカット)に起因します。これらの誤った思考プロセスがどのようにして誤りを招くかについては多くのことが知られていますが、それらを防ぐ方法についてはほとんど知られていません。航空会社のパイロットや原子力発電所の運営者など、他の高リスクで信頼性の高い職業には問題があると考えられていますが、チェックリストを使用することでエラーが減少しています。最近、チェックリストは、手術室や集中治療室などの医療現場で受け入れられています。

チェックリストのメリット

・記憶の依存を減らす。

・包括的な鑑別診断を検討できる

メタ認知を活用できる

・予測可能なバイアスを回避できる

疲労・寝不足などの感情的悪影響を回避できる

 

この記事では、チェックリストの概念を診断に拡張し、3つのタイプのチェックリストについて説明します。

(1)医師が認知アプローチを最適化するよう促す一般的なチェックリスト

・病歴を完璧に入手してください。

・集中的かつ意図的な身体診察を実施してください。

・病歴・身体診察・検査所見から初期仮説を考え、鑑別しましょう。

・診断を一旦見直しましょう、「タイムアウト」をとります。

ー反対のことを考えてみます。

ーこのまま進めて、間違っていた時を予測してみましょう

ー意思決定支援ツールを活用してみましょう

・計画に着手するが、不確実性があることを認識し、フォローアップをどうするか考えてみる。

 

(2)医師が診断エラーの最も一般的な原因を回避するのを助ける鑑別診断チェックリスト - 正しい診断を可能性として考慮していないこと、

見逃してはいけない疾患・見逃しやすい疾患を症候ごとにリストアップ。

100%カバーはできないが、99%カバーするリストは目指せる。

 

(3)一般的な落とし穴のチェックリストおよび選択された疾患の評価を改善するための認知強制機能。

正しい手続きを確実に実行したり、不都合な事態を防止したりするためのプロセス実行における重要な要素で、バイアスを回避することできる。

これらのチェックリストは非公式に作成されたものであり、厳密な評価を受けていません。この記事の目的は、チェックリストを診断プロセスに適用するこれらの最初の試みのさらなる調査と修正を主張することです。チェックリストの背後にある基本的な考え方は、臨床上の問題解決において直感と記憶に頼ることに代わるものを提供することです。この種の解決策は、診断の推論が複雑であることによって要求されます。診断推論には、大きな不確実性と限られた時間の条件下での意味の把握が含まれます。

*今後の課題

・意思決定支援システムは実際には広く採用されておらず、不十分な知識なこともあり。

・チェックリストをオンタイムで確認できず、時に診断までに長期化することもある。

・ほとんどの患者にとってチェックリストは不要で、多くの医師が直感的な診断を好む。

 

チェックリスト使用にあたって考えるべきこと

(1)それらは診断ミスを防ぎますか?

(2)チェックリストに最適な内容と構成は?

(3)誰がチェックリストを見直すべきですか?

(4)チェックリストは忙しい医師に評価されますか、それとも受け入れられますか?ワークフローにどのように活用されるべきですか?

(5)チェックリストはどのように提示されるべきですか:ポケットの中、壁、机、電子カルテに?

(6)いつチェックリストを見直すべきですか

(7)私たちは日常的にあるいは選択的にチェックリストを使うべきですか?